ボストーク松山藤原塾

火の用心!

皆さん こんにちは

【季節の話題】
今日の松山は、雨→晴れ→雨+雷→晴れ?と大荒れの天気でした。皆さまお住まいの地域はいかがだったでしょう。

今週で11月もほぼ終わり、来週から12月です。あっという間に1年が終わってしまいます。今年は「あっという間」と言われることが多いような気がします(毎年言ってるのかもしれませんが)。

あっという間の11月終わり、スーパー、コンビニ、あちこちでクリスマスの飾りを見かけるようになりました。子どもが小さいときには大事なイベントですし、若いときは、山下達郎(クリスマス・イブ)や松任谷由実(恋人がサンタクロース)、マライア・キャリー(恋人たちのクリスマス)などなど聴きながら楽しんでいましたが、今は「そっか、クリスマスなんだ」で終わってしまいます。もうちょっと楽しんだ方が良いのかな。

佐賀関の火事隣の県ですが、愛媛県人にとっては身近なエリアだけにショックなニュースでした。酒田や糸魚川の大火、能登半島地震の後の輪島市中心部、そして今治の山火事もありました。過疎地域での大規模な火災では復興は非常に困難で、場合によっては集落が消滅する可能性があります。過疎地域ではない県庁所在地のような都市でも空き家は増えてきており、火事の危険は高くなっています。火災を起こさないというのはもちろんですが、人口減少下の日本におけるこれからのまちづくり、その中で防災の問題も考えることが必要だと思われます。

【今週考えたこと!】
私のことばかり書いてもいけないのですが、税理士会の仕事で、国税庁には何度も行きました。国税庁は財務省の外局であり、霞ヶ関の財務省内にあります。この建物は1939(昭和14)年の建築で歴史ある建物です。アーチ型の門はテレビにもよく出てきますが、そこから入ると中庭があります。建物の中は、廊下もほぼ昔のまま、愛媛県庁本館と似た空気があります。そこで財務官僚の方々と税制について議論します。一般的な税理士の目線は、税務申告とその延長線上にある税務調査ですが、財務省の仕事は国家としての財政であり税制の構築と維持・管理です。

そこで大事な視点の一つが、公平、です。しかし、これが実に難しい。日本の特に直接税の多くは超過累進税率制度を採用しており、課税の対象が大きくなれば税率が上がる仕組みになっていますが、その背景にあるのが「課税の公平」です。しかし、公平感を感じられない制度があるのも事実です。例えば、下記のようなものです。

  • 配当金や株式の売却益などの金融所得は分離課税20%であり、総合課税45%より低い(2025年以3.3億円を超える場合に適用される追加納税制度あり)
  • 富裕層は節税策を講じることで節税ができる
  • ふるさと納税は税を払う高所得層の方がメリットが大きい
  • 巨大IT企業が払う税金はあまりに少なく、利用している地域の税金負担はほとんどない

この不公平感が、今は政治の問題として取り上げられようになってきました。

日経電子版2025年11月25日 2:00配信の経済教室「積極財政の『薄いバラマキ』は民主主義の危機招く 井手英策氏」にこの問題が分かりやすくまとめられています。税金は誰でも払いたくないものです。払う以上は、何らかの形で役に立っていると納得できることが必要です。しかし、今の政治は現体制を批判する中で、その不公平感をあえて煽っているような気がします。果たしてそれで良いのか、ここはひじょうに重要なところです。

記事では下記のように書かれています。

近年の財政研究では、財政が社会の連帯意識を醸成する面と分断を加速させる面の両面を持つことが明らかになっている。同胞と連帯する道は、給付と負担のバランスを丁寧に議論し、納税者・生活者が公正さを実感できる社会を追求することで切り開かれる。反対に、財政を所得を増やす道具とみなし、財政倫理を捨て去り、不十分な給付で国民の歓心を買う政治は社会を分断させる。国民同士が給付や税還付の多寡を競い、負担の回避と転嫁に躍起となる社会に連帯の居場所はない。

積極財政の「薄いバラマキ」は民主主義の危機招く 井手英策氏

思い切った財政支出(減税を含む)も必要ですが、それ以上に、国民に対して納税の必要性・財政の意味を丁寧に説明し、自らも不公平感を感じさせない行動(雑税や裏金がないこと)を行うことが政治家には求められています。

高市政権がこのあたりをどのように考えているのか、です。先日打ち出した総合経済対策について考えてみます。今回の対策は、規模として、減税分も含めて21.3兆円(一般会計としては17.7兆円)の規模になります。財務省が提示した原案は、減税分も含めて17兆円でしたが、これが「しょぼすぎる」として規模を積み増ししました。一般会計としての補正予算は、リーマン・ショックの時が14兆円、東日本大震災の時が15兆円ですから、いかに規模が大きいかと言うことがわかります。高市政権が誕生してから、円安が進み、金利が上昇している中で、財政的な負担から大きな圧力がかかるのではないかと心配する声は小さくありません。サラッと書きましたが、「そうだよね、ちょっと心配だね」と思う方がどれだけいるのでしょうか。「そうだよ、物価が上がって国民の生活は大変なんだからこれくらい仕方ないよ。」と思う方が多いのでしょう。

別の視点で考えます。日本の財政は、インフレによって健全化の兆しが見えていました。物価上昇により企業は値上げが可能になり、名目の売上高が膨らみ、利益金額も大きくなります。それが税金として入ってくるので、税収が増えます。また、金利上昇は預貯金の利息が上がり、それにかかる源泉所得税も増加しますし、給与についても同様です。財政が健全化することで、財政に余力ができます。余力ができれば今まで削ってきた予算を増額する、例えば少子高齢化による将来の支出に備えることもできます。今回のような大規模な支出は行うことは、その蓄えを先に食い潰すことになります。また、金利上昇の結果、これから発行される国債の金利は上昇し、財政負担では増加に直結します。将来的に柔軟な財政支出ができない、硬直的な財政に陥ってしまう可能性があります。

もっとも財政支出の結果、企業の利益が増加し、設備投資が増える、給料も上がって消費活動が活発になる。政府が自分たちを支えてくれているという意識を持つこともできます。つまり、景気が良くなり、それが税収につながれば良いのでしょうが、そのような楽観的なシナリオになるかどうか。経済の復活がなければ、財政負担だけが残るという今までの失敗を繰り返すことになります。

財務省との議論に話を戻します。税理士として何を話すか?ですが、納税者に最も近くにいて税制を理解している存在は税理士です。現場での考えを制度に活かすように説明・説得・お願いをします。財務省からは受け入れられないというものが大半ですが、その結果、「なるほど財務省はこう考えるのか」と財務省の発想を理解することができます。その上で、建設的な意見を出して議論していくことがベストだということは理解できました。そのような経験も、今回の経済対策を理解する為には役に立っている、と思いたいです。

【今週のAIネタ】
米半導体大手のエヌビディアの好決算が発表されたにもかかわらず、何となく株式市場が不安定になってきました。その理由の一つは、AIは大量の電力を使うため、その電力供給が可能か→AIが理想通り動くのか?という不安感です。仮にバブルが崩壊しても、AI技術に対する将来性が消失するわけではありませんが、一時的には混乱するかもしれません。

冬に向けて寒暖差が激しくなってきます。この気温差で油断すると風邪を引いてしまします。体調には十分お気をつけください。


※この記事では一般的な経済市場動向についての情報提供を行っているもので、特定の投資を推奨又は勧誘するものではありません。