皆さん こんにちは
10月に入りました。昨日は中秋の名月を楽しまれたでしょうか?日向に置いた車内も気温があまり上がらず、陽の力が弱くなったことを感じます。松山市内の今日の最高気温は29度とまだ高めですが、少しずつ秋に近づいていますね。
松山では10月5日から7日まで秋祭りが行われます。曜日に関係なく、この日程と決まっており、最終日の7日は公立の小中学校は休み、ゴミの回収も止まります。町内会単位で神輿が出て、大人神輿があるところでは、鉢合わせが行われるところもあります。
祭というと、気持ちが何となく騒いで落ち着かないという方もいらっしゃると思います。この後にあるハロウィーンも一緒ですね。私もなんとなく落ち着きません。落ち着かないというのは、心が騒ぐではなく、早く終わってくれれば良いのに、の方です。
そんな秋に大きな変化が起きました。政治の話と思うでしょ?そこにも触れますが、ちょっと違うところから考えてみます。
2025年9月の事務所から発信するお客様向けのレターで、「最低賃金への対応を念頭に、人材不足に対してはAIの活用を考えるべき」という記事を書きました。愛媛県の最低賃金は、今年12月から、現在の956円のところ1,033円に引き上げられます。金額にして77円、8%の引上げとなります。一般的な企業で、収益を8%上げるのは至難の業です。人件費が上がる中で、会社の利益を維持するためにはどうすれば良いか。人は増やさず、効率化を図り経費に占める人件費の割合を下げることです。最低賃金の引き上げはまだ数年継続すると言われていますので、今年を乗り切って終わりではありません。経営者としては早急に、そして具体的に考えることが求められます。
そのような動きがあると考えられる情報があります。
厚生労働省が10月3日に発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍と前月から0.02ポイント低下しました。有効求人倍率とは、ハローワークからのデータに基づき算出されるもので、求職者1人に対してどれだけの求人があるかという指標です。これが下がるということは、企業の求人が相対的に下がってることを意味します。
このことは、日経電子版「8月の有効求人数、前年同月比で26ヵ月連続減 人手よりコスト抑制」で詳しく書かれています。今までは少子高齢化を背景に人手不足感が強くあり、給料を上げてでも人を雇う流れがありました。しかし、最低賃金の引き上げが続き、収益面でも人件費負担がダメージになりつつあります。そこでなんとか工夫してやってみると、「新人いなくても良いんじゃない?」ということになり、やや乱暴な見解ですが、求人を見送る企業が増えてきたということでしょうか。
これをさらに一歩進めた日経電子版の記事が、「経済大転換の逆説 高市早苗・自民党新総裁は流れに弾みを」です。9月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業から中小企業までのソフトウエア投資の2025年度計画値ががうなぎ登りとなったというものです。実績値ではないので、本当にそうなるか分かりませんが、多くの企業家は、人手不足を補うためにはIT投資が必要だという覚悟を決めつつあると言うことでしょう。この記事は自民党高市新総裁誕生に絡めて、この経済の変化を止めてはいけないというものです。日本初の女性首相の可能性も出てきたという点で、政治の世界でも変化が起きているかもしれません。
さて、その高市早苗新総裁ですが、4日土曜日の就任から週末にかけて様々な記事、コラムを読んでみました。高市氏は安倍元首相の強力な支持者であり、安倍路線が復活するのでしょうか。私は難しいのではないかと思っています。なぜなら、政治を取り巻く環境が当時とは全く異なっているからです。安倍元首相が主導したアベノミクスの基本は、デフレ克服のための円安誘導と財政出動でしたが、今はインフレに移行しており、円安を進めると物価高に歯止めが利かなくなります。財政出動を進めると利上げ=円高となってしまいます。最近税収が改善している背景には、インフレによる物価水準の上昇も大きく寄与していると考えられます。インフレ→価格の上昇→利益の上昇→税収の上昇→財政健全化の流れです。財政赤字削減のチャンスをあえて潰してしまうのことになります。景気に火をつけようとした経済政策を気温が高い今実行してしまうと、火事になってしまう可能性があります。もっとも自民党は衆院、参院ともに少数与党であり、公明との間も良好な関係が継続できるか不明な段階でどのような政策が実現できるか不明ですし、そもそも与党人事に着手したところですから、もう少し様子を見た方が良いと思います。
政治家としての側面を見ても、安倍氏は世襲政治家でしたが、高市氏はサラリーマン家庭に生まれ、松下政経塾〜米民主党の個人事務所勤務を経て国政に挑戦しています。両親と夫の介護の経験もあり、国家観は似ていますが、ライフスタイルは全く異なるものです。ここが実際の政治にどう現れてくるか、でしょう。ちなみに、高市氏のご両親は愛媛県松山市出身です。若い頃に中村知事の父である中村時雄氏との対談がテレビ愛媛で流されていました(大学も慶應、早稲田に合格されていたそうです)。愛媛とご縁があることで少し身近な存在と感じつつ、政治の結果に対しては冷静にそして厳しく見ていく必要があります。日本経済が少子高齢化、人手不足という課題に対して、やっと腹を決めてIT化に向けて動き出そうとしている、経産省のレポートでもその結果日本の経済成長率は上がると言われている。新しい政治の動きがあるとするなら、その経済活動を支え、国民生活に安心感をもたらすことができるか、です。
少し前の話になりますが、私は税理士会で政治的な活動をしている中で、高市氏のスピーチを何度か聞いたことがあります。とても元気に、ウィットに富んだお話しをする方という印象でした。また、公認会計士の知人は地元で後援会の会長をしていますが、とても知的な方だよという話を聞いたことがあります。
さて高市さんは皆が思っているようにやっぱり高市早苗だったねという政策を進めるのか、ちょっと違ったねと思わせる方向なのか。総裁選前は自民党がどう変わるかが注目されていましたが、終わってしまうと、新総裁の行方ばかりが注目されています。いずれにしても、ここはしっかり見ておく必要があります。
今回の総裁選に関して、ある国会議員の方が、「(1回目は別の人に投票したが)2回目の投票で多くの党員が投票した高市氏に投票した」とコメントしていました。これを読んでちょっと違和感が。なんのための投票なの?それなら投票の意味ないじゃん、ですよね。1回目の投票数に関わらず、2回目でも候補者の政策を見て決めるべきではないのかな。当事者がそうなのですから、自民党の再生は本当に可能なのか、不安です。
月曜日に株価が大きく上がり、円が大きく下がりました。今日火曜日には少し落ち着きましたが、明日以降どうなるか。これはもちろん高市総裁誕生に対する市場の反応です。経済政策が動き出す=株価上昇、財政出動による国家債務の膨張の可能性=円安+金利上昇これがマーケットです。世の中が変わるといろいろ勉強になります。祭りだっ!ってあんまり浮かれてる場合ではありません。
【今週のAI】
AI技術を支えているのはGPU(Graphics Processing Unit)という半導体です。米国のAI関連企業は、このGPUを担保に資金調達しています。資金調達上、GPUは6年で償却されるのですが、エヌビディアは1年単位で高性能な新型品を投入する計画です。1年で更新されるということは、去年買ったGPUが陳腐化してしう=資産価値がなくなるということです。そうなると投資した事業は担保資産の価値がなくなり不良債権となる、つまりバブルが崩壊することになります。今の株価を支えるのはAIに対する期待と言っても良いくらいですから、もしその期待が失われることになると株式市場が一時的に混乱する可能性があります。そのような内容の記事を最近よく見かけるようになってきました。株式市場は高市トレードで盛り上げっていますが、何が起きるか分からないのがマーケットです。
秋祭りは秋に収穫された農作粒の恵みに感謝し、神にお供えするために行われます。前のめりになりがちなマーケットの話から少し離れて、秋祭りの空気に触れてみましょうか。
なお、このレターでは一般的な経済市場動向についての情報提供を行っているもので、特定の投資を推奨又は勧誘するものではありません。次回、オンライン松山藤原塾は2025年11月13日(木)です。近日中にご案内いたしますので、ぜひご参加下さい。