先日、IT系企業の若手社員に向けて「メールの書き方」を指導してほしいという依頼がありました。内心、「若手社員とはいえ、社会人としての経験があるのに、今さらメールの書き方?」と、驚きましたが、敬語・言葉遣い、送受信の作法などに失礼な対応があると、信頼を失い、機会を逃してしまうこともあるということでした。
メールは日常的なビジネスツールです。それだけに、基本をマスターしているつもりでも、間違いに気づかないまま我流だったということもあるかもしれません。
また、社外宛のメール文章に思い悩む時間などは、非効率な仕事になっているかもしれません。
スポーツでも仕事でも、応用力(臨機応変)は、基礎力があってこそ育まれるものです。ビジネスにおいてマナーは基礎力です。基礎力が身についてこそ、時間短縮や、最小の労力で最大の効果を目指す「効率化」が可能になるのではないでしょうか。
AI、デジタル化、労働力の減少といった社会課題を背景に、今後ますます重要視される「効率化」と、一見、非効率に見える「マナー」の両立という観点を整理してみたいと思います。
「効率化」と「マナー」の対立点
「効率化」:時間短縮、最小の労力で最大成果を目指すもの
「マナー」:相手を思いやる丁寧さ、配慮が基盤
→「効率化を優先すると、マナーが軽視される」「マナーを大切にしすぎて非効率になる」
両立のカギ
- 相手にとっての効率化を考える
自分だけでなく、相手にとってもわかりやすく、スムーズな対応を心がける - シンプルでも不快にさせない表現
メールなら「結論から書く」+「一言お礼を述べる」+「ネームコーリング」など
※「ネームコーリング」とは、相手の名前を呼びかけること。「田中様にはいつもお世話になっています」など、メール文章の本文で、あえて相手の名前をよびかけること。 - マナーを形式ではなく「目的」で捉える
形式にこだわって長々と書くより、相手の理解と安心を得ることが目的と捉える。
実践例
- メール
「お世話になっております。○○の件、以下の通りご連絡いたします」
*「ご連絡します」=丁寧語
「ご連絡いたします」「ご連絡させていただきます」=謙譲語
*長い前置きは不要。礼儀は最小限最適を目指す - 接客
自分都合でマニュアル的に早く終えるのはNG。お客様のニーズを聞きつつ、最短で満足 できる提案、対応をする
*「お急ぎでしたら、こちら(の方法)がスムーズです」「もしよろしければ、こちらの選択肢もおすすめですのでご検討ください」 - 電話やチャット
「2点だけ確認させていただけますか」「お忙しいところ恐れ入ります。取り急ぎ、要点だけ申し上げます」「詳細はメールで共有しますので、ここでは概要だけご説明します」 - 会議
「本日のゴールは○○です。まずは、決めるべき点から確認しましょう」
★「効率化=短くする」ではなく、相手の負担を減らしながら気持ちよく受け取れる形にすること★