F&Aレポート

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

 9月になっても秋が()ない。「秋がこない」のは「飽きがこない」のか、いやいや、もう夏は「飽き飽き」ですよ。なんて言いたくなる今日この頃。それだけに、若山牧水「白玉の、、、」秋の気配には、心から魅せられてしまいます。

 日中の気温はまだ30度を超える日もありますが、秋は音もなくやってきます。「秋はそっと袖を引くように訪れる」「秋は静かに気配を忍ばせる」「秋は音もなく寄り添ってくる」「秋は気づけば肩を並べている」 いずれも夏の余韻が残る中で、ふとした瞬間に秋を感じるイメージです。

 今年の「仲秋の名月」「十五夜」は10月6日です。これは、旧暦8月15日なので、必ずしも満月になるとは限りません。(満月は10月7日)

「仲秋の名月」といえば、日本では月見団子やススキを供えて、豊作を祈るという風習がありますが、中国では「中秋節」として家族団欒の象徴で、月餅を食べる習慣があるのだそうです。また、「月にはうさぎがいて、杵で餅をついている」という言い伝えは、インドの仏教に端を発し、中国を経由して日本に伝わったものと言われています。

 いずれにせよ、古今東西、「月」は神聖なものであり、神秘的なパワーを持つものとして崇められてきました。

「白玉の酒」は、澄んでいて清らかで、光を帯びています。「歯にしみとほる」ほど冷たく、ほろ酔いの心地よさを感じつつ、「秋の夜の酒」は、夏の終わりの寂しさや、静寂な余韻に包まれています。しんみりと月と対話しながら「しづかに飲むべかりけり」。「暑さ寒さも彼岸まで」。秋の訪れがそろそろ加速することを祈りつつ、、、。