F&Aレポート

小さな習慣、大きなメリット 〜「カクテルパーティー」効果の活用

 人の悩みの9割は「人間関係」と言われています。たとえば、借金が悩みであっても、その根底には「人間関係」が絡んでいると言われています。会社を辞める原因の1位も「人間関係」です。何かと難しい人間関係ですが、これから紹介するちょっとした日頃の習慣で変えていくことができるかもしれません。

 心理学の「カクテルパーティー効果」を取り入れて、活用してみませんか?「カクテルパーティー効果」とは、雑音の多い環境でも、自分にとって重要な情報(自分の名前、自分が降りる駅の名前、関心のある話題など)を、選択的に聞き取れる私たちの脳の働きのことを言います。

 にぎやかなカクテルパーティーで、周囲の会話が騒がしい中でも自分の名前が呼ばれると、すぐに気づく現象から名付けられたと言います。

 これは、人間関係の構築にも活用できると言われています。たとえば、相手との距離を縮めたいときは、会話の中でできるだけ、相手の名前を呼びかけるようにします。これは、ラインやメールのメッセージを送るときも同じです。文面に相手の名前を意識的に何度か組み入れていくのです。

 そうすると、無意識のうちに相手の意識がこちらに向いて、相手の心に(貴方のことが)印象付けられるのです。

「カクテルパーティー効果」は、アメリカで行われた心理学の実験でも実証されています。 一切相手の名前を呼ばないで会話をする男女のグループと、意識的に会話の中で相手の名前を呼ぶようにする男女のグループ。二つのグループに分けて、一定の時間会話をしたところ、名前を呼んだグループの方が、「また会いたい」「社交的」「フレンドリー」というような、相手に対して好意的な印象を残しました。

 日本語は、「主語」がなくても会話が成立するという特徴があります。(これは世界的に見ても珍しい言語なのです)。職場や家庭で「相手の名前を呼ばない」ことに、慣れてしまっていませんか?

 名前だけでなく、「お母さん(お父さん)」「お客様」といった呼びかけも、名前を呼ぶことと同じ効果があります。もちろん、名前だけでなく、「相手の興味のある話題」を提供することもポイントのひとつです。

  1. 接客、営業
    「お客様の名前を会話に入れる」→「○○様のお好みに合いそうです」などと呼びかけると注意をひきやすくなります。「○○さん、おつかれさまです」→「相手の名前」+「挨拶のことば」は、よりパーソナルな挨拶になります。習慣にすると自然にコミュニケーションは良好に。
  2. プレゼン、スピーチ
    「コスト削減」「売上アップ」「安心」など、聞き手が関心の高いワードを盛り込むことで、注意を引きやすくなります。相手の立場に合わせて「刺さる言葉」を選んでみましょう。
  3. 教育、学習、研修
    生徒の名前を呼んだり、関心事と関連づけたりすることで、集中を高めやすくなります。「自分に関係がある(メリットがある)」と感じさせることで理解が深まります。
  4. 家族、地域などの日常生活
     家族(夫、妻、こども)の名前を呼ぶ習慣をつけることで、より良い意思疎通ができます。お父さん、お母さんなどの呼びかけでも、関係性は向上すると言われています。 一般的に難しいとされる嫁と姑の関係も、「お母さん、最近体調はどうですか?」など、「お母さん」の呼びかけを、あえて行うことで、改善されたという報告もあります。

「カクテルパーティー効果」。試す価値はありそうです。