F&Aレポート

説得力を増す、目線のマネジメント ~スピーチの原則:「ワンセンテンス・ワンパーソン」

説得力を増す、目線のマネジメント ~スピーチの原則:「ワンセンテンス・ワンパーソン」

 「目は口ほどにものを言う」とは、よく言ったものです。口ではそれなりのことを述べていても、目線がおどおどしている、足元ばかりを見ている、目が泳いでいる…などでは、一瞬にして「自信のなさ」を露呈してしまいます。これでは、せっかくいい話しをしても、伝わるのは半分以下です。

 目線を定めると、聞き手に「余裕」「落ち着き」「場慣れしている」などの印象を与えます。それは同時に、説得力を増し信頼、安心感につながります。

 では、どのように目線を定めたら良いのか。それが「ワンセンテンス・ワンパーソン」です。

■ 「ワンセンテンス・ワンパーソン」とは
 ワンセンテンスとは一文です。一文とは、主語から始まり、読点までの文章です。
 ワンセンテンス・ワンパーソンとは、「一文は一人」というルールです。
 たとえば、「この商品の特徴は、従来品よりもコンパクトで機能性が高いという点です。」という一文なら、この一文の間は、一人の人だけを見るという目線のマネジメントです。

 目線が泳ぐ人は、「この商品の」で一人、「特徴は」で別の一人、「従来品よりも」でさらに他の人、、、というように、常に目線が動いています。

 一文が終われば次の人、また一文が終わればその次の人、、、というように、ゆっくり目線を動かすことで、一人ひとりを見て、しっかり伝えているという印象が強くなります。

 さらに、会場をA/B/C/Dと、ざっと4分割して、Aのゾーンはこの人、Bのゾーンはこの人というように、ゆっくり視線を移していけば、Aゾーン→Bゾーン→Cゾーン→Dゾーンと見渡すことになるので、会場全体に語りかけているように見えます。

■ 「ワンセンテンス・ワンパーソン」の難しさ
 とは言うものの、「ワンセンテンス・ワンパーソン」は、実は高度のワザなのです。実際にやってみるとわかりますが、そもそも「ワンセンテンス」が短くまとまらないと、不可能なのです。

 日本語の特徴として、主語と述語の間に、いくらでも形容詞や文章が入る、即ち一文が延々長くなるということがあります。

 たとえば「この商品の特徴は、従来品よりもコンパクトで機能性が高いという点です。」という文章が長くなると、以下のようになります。「この商品の特徴は、従来品よりもコンパクトということなんですが、まあ、手のひらサイズ程度に縮小されていまして、女性の方でも簡単に操作できる感じになっているんですが、機能性が高いという点についても注目されていまして、これまでの3倍もの機能が付随していまして、これ一台あれば、ほぼなんでもできるという優れものになっていまして、、、、」というような話を聞かされたことはありませんか?

 一文終わる頃には、なんの話しだったか主語が思い出せないほどの長文(悪文)もあります。こうなると、ワンセンテンス・ワンパーソンは機能しなくなります。

 そうでなくとも、日本人はもともと「人の目を見るのが苦手」な民族です。これは、歴史的な背景や文化、慣習が原因していると思われますが、日本では武士の時代、そして近代まで、目上の人の目を見ることは失礼な行為でした。時代劇などでも、将軍の前にかしづく家臣たちは、みんな下を向き「おもてを上げぃ」と言われて、初めて顔を上げています。下手に目を見ると、「ガンをつけた」などと言いがかりを食らうなんてこともあります。

 話を戻しますが、私たちの日頃の挨拶や一息で言い切る文章は、3秒?10秒程度です。そのため、一文は3秒?10秒程度にまとめなければいけません。

 短い一文を重ねることで、全体的には無駄のないわかりやすい文章になり、さらに「ワンセンテンス・ワンパーソン」が可能になるのです。

 目線のマネジメントには、一文のマネジメントも必要なのです。