ボストーク松山藤原塾

あちらを立てればこちらが立たず?

皆さん こんにちは

8月に入り、強烈な陽射しが少し変化したような気がします。陽が入ってくる角度も変わりました。間違いなく秋には向かっているようです。しかし、暑さのピークを迎えて全国的に35〜40度の気温というのはどう考えても異常です。日本の海水温が高くなって日本近辺で捕れる魚の量が大きく減少しているという記事が本日の日経電子版に出ています。愛媛県の養殖事業もこの海水温の上昇の影響を受けています。

先日、銀行系シンクタンクのレポートに米国の税制に関する原稿を書いたのですが、トランプ政権は地球温暖化を認めておらず、自動車や住宅への省エネに関する税制の優遇措置をほぼすべて前倒しで廃止しました。MIT Tech Reviewによると、米環境庁は温室効果ガス排出規制に対して撤廃の検討を開始したそうです。いろいろな見方はあるとしても、連日の暑さを体験すると、この制度を後退させる政策には身をもって大いに疑問を感じるところです。MITの記事によると、「米国の気象政策はガムテープと夢で何とか持ちこたえているような状況」だそうです。これだけ暑い日が続くと、地球温暖化を認めない米国の政治家に対して、「お前らええ加減にしろよ!」と言いたくなってしまいます(ちょっと書きすぎたかな)。

厚生労働省の中央最低賃金審議室の小委員会は、8月4日、2025年度の最低賃金の目安を全国の加重平均で時給1118円にすることとしました。この金額は現在の1055円から63円の引き上げとなり、過去最大の引き上げ幅だそうです。実際の最低賃金は、これを受けて最終的に都道府県毎に決定されます。愛媛県でもこれに近い引上げ幅になると予想されます。このような高額の引き上げ幅となった最大の要因は物価上昇です。最低賃金を引き上げることで、インフレで厳しい労働者の生活を守ることが目的です。

しかし、日経電子版8月1日にこのような記事がありました。「『106万円の壁』越え増加か 最低賃金1110円超で働き控え加速懸念 」最低賃金が上がると、社会保険料がかかりはじめる106万円の壁に到達する人が増えてしまい、労働時間の短縮が人出不足につながるのではないかという記事です。昨年の最低賃金引き上げの際の日銀の地域経済報告(さくらレポート)において福島県の実情として取り上げられています。https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer241007.pdf私どものお客様でも、パート従業員が税金や社会保険料の壁を意識して、忙しい12月に仕事をしてくれなくなると言う話を聞きます。

賃金を引き上げて良しというのは一面であって、人手不足という問題にも対応しなければなりません。最低賃金審議室の役割は必要性があるとして、国全体を機能的にするのはどうすれば良いか、幅広い視点で考える風潮が今の行政にはないように感じます。例えば、所得税であれば、政府税調は物価水準に合わせて各種控除額を定期的に見直していこうという議論を始めています。であるなら、壁となっている106万円という水準も物価水準に応じて見直されるべきなのではないでしょうか。ここが絶対値である理由を見いだすことはできません。検討するにあたり、役所の壁があるのであれば、それを乗り越える努力が必要だと思います。それが政治であり、メディアであり、より多くの国民が考えることです。

暑いと冷たいものが食べたくなりますし、エアコンの冷たい風が心地良くなります。でも、行きすぎるとそれでお腹を壊すこともあります。熱中症も怖いけど、お腹を壊すのもいやですね。暑さの問題も、あちらを立てればこちらが立たず、です。