ボストーク

湊町レター Letter From Minato-machi 2025(令和7)年8月1日 No.169

8月になりました。例年になく早い梅雨明けで、ずっと夏が続いていますが、今年の夏もなんとか折り返し地点まできたと思いたいところです。

さて、経営者にとって価格設定はひじょうに重要かつ難しいものです。30年近く続いたデフレ経済下では、値上げなどとんでもないという空気でしたが、今は資材、人件費等々のコスト増が厳しく会社を維持するためには値上げは避けられません。値上げする金額だけでなく、タイミング、条件など様々な検討が必要です。しかし、実際にどうすればよいのでしょうか。

7月31日付日経電子版に、「高級ブランド、勝ち組はエルメス・プラダ『値上げ力』が分けた明暗」という記事がありました。今年上期、中国の景気低迷やトランプ関税といった厳しい環境のもと、この2社は値上げを確実に実施することができ、好調だったものの、ルイヴィトンやケリングの業績は芳しくなかったというものです。

エルメスのような企業の強味とは何なのか、ChatGPTと話し合いながら考えてみました。エルメスと自分の会社を比較するなんてとんでもない、と思われるかもしれませんが、やってみると結構参考になります。諦めてしまう前にちょっと考えてみましょう。

エルメスが値上げできる企業である背景には下記のようなことが考えられます。

  1. 自社の存在価値を明確にし、それに顧客が共感し、語りたくなるストーリーを構築する
  2. 品質だけを追求するのではなく、これが良いのよ!と思わせるポジションを作る
  3. 誰にでも売るのではなく、あなただから売ると市場を狭める
  4. 接客、提案、専門性などに磨きをかける
  5. 値引きは一切しない
  6. お客さんと一緒になって文化を創る

これらに共通して大切なことは、企業として、顧客から求められているものを認識し、理解し、考えて価値を創造することです。「ウチは品質では他社に負けない」という自社視点による品質ではなく、お客様が求める品質を考えることです。そして、数を求めないむしろニーズに応えられないくらいの規模=商品が常に足りないくらいにすること。経営者になると、どうしても前年対比に注目して、売上を伸ばすことを考えてしまいます。前年対比は大事な要素ですが、増収だけを見るのではなく、その背景をしっかり読み取ることです。数字だけでなく、お客様の声を聞き、顔を見て、自社の商品価値に磨きをかけていくことです。

バブル期以前、昭和時代の値上げは、世の中全体の流れの中で、横並びで行っている感じでしたが、今は個々の企業が単独で考えていく必要があります。そのためにも、自分の会社が持つブランド力について考えてみてはいかがでしょうか。