先日、いつもの蕎麦屋に入ると、外国の観光客らしき人たちが数名、テーブルを囲んでいました。地方の小さな蕎麦屋にも海外からのお客様はやってくるのだと、あらためて『インバウンド消費』という言葉がよぎりました。
まさか、蕎麦をフォークで食べたりはしないよね?と思いつつ、興味津々に横目で見ていたら、彼らは思った以上に上手に箸を使っていました。
日本食はブームを通り越して、すでに世界中あらゆるところで親しまれているので、chopsticksは、もう海外の食卓でもメジャーなものになっているのかもしれません。
ところで、「和食の作法は箸に始まり箸に終わる」と言います。箸を上手にきれいに使うことが、和食の作法ではもっとも重要とされているのです。
たった2本の棒で、食べ物を「はさむ」「切る」「割く(さく)」「すくう」などの、すべてをこなす箸。それらの機能を果たすためには、箸の持ち方が正しくないと、日本食をいただくのは難しくなります。
正しい箸の持ち方をここで紹介するまでもありませんが、箸は、鳥の嘴(くちばし)のように、上下に動かして目標物を挟む(はさむ)のが良いとされています。その証拠に、美しい箸の持ち方は「くちばし型」という呼び名がついています。
さらに、箸を持つ位置は、箸先から箸の長さの三分の二くらい上のあたりと言われています。この位置で持つと、箸先で簡単に小さな豆でもつまめるようになります。
また、箸先はなるべく汚さないで使うのが上品とされています。だいたい3センチ未満です。「皇后さまは箸先1センチほどしか使われない」という話も聞いたことがあります。なかなか、これは難しいことですが……。
たかが「箸」ですが、されど「箸」。世界に誇れる文化である「日本食」が発展したのも「箸」ありてこそかと。2本の魔法のスティックを自由自在に扱える日本人ってスゴイ!と、思う海外の人も多いのではないでしょうか。