F&Aレポート

「おもてなし」と「カスハラ」の間で揺れ動く従業員を守る

 先日、「クレーム対応、カスハラ対策研修」を行いました。カスハラを巡る状況は、最近動きがずいぶん加速しています。2022年2月には「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を厚生労働省が発表し、各業界でカスハラに関する行動指針が策定されるようになりました。

 2023年6月には旅館業法が改正され、カスハラを繰り返す顧客の宿泊を拒むことができるようになり、同年9月には労災認定基準にカスハラが追加されました。こうした変化の背景にあるには、「従業員を守る」意識です。今後は超高齢化社会が進化する中で、認知症への対応もカスハラの問題になってきます。これから一層注目されるであろうカスハラについてまとめてみました。(参考 JAICO 日本産業カウンセラー協会資料)

カスハラ増加の原因と社会的背景

 近年、行政や企業のカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が本格化しています。その背景にはカスハラの深刻化があります。2022年に日本労働組合連合会が実施した調査によれば、直近5年間のカスハラ発生件数について4割の人が「増加した」と答えています。

 複数のメディアでは、次のように分析しています。

過剰なサービスが一般化したこと

 企業間の競争が激化し、それがサービスの質を過度に高め、消費者の期待値も上がってしまった。結果、期待に沿えないサービスに怒る消費者を作りだしてしまった。

コロナ禍でのイライラ

 コロナ禍で消費者がイラついてしまう社会環境ができてしまった。

SNSの普及

 SNSによって消費者がクレームを言いやすい場が増え、拡散も容易になった。

カスハラ行為者の5つのタイプと特徴

行為者のタイプ特徴
権威主義型(承認欲求型)「論筋クレーマー」「世直し型クレーマー」。地位や権威を振りかざしながら、知識をもとに理詰めで責める。中高年の男性に多い。
自己正当化・激高型自分は正しいと怒鳴り、理不尽な怒りで相手を制圧するタイプ。「不満発散型クレーマー」と呼ばれる。
被害者意識・自責型なんで自分がこんな目に遭うのか、こんな店で買った自分が悪いと一見、自分を責めながら、実は相手を責めている。
解決志向型公共交通機関の遅延などで見かける、早くしろ、なんとかしろと、迅速な問題解決を求めるタイプ。
社会的制裁・威嚇型「訴える」「ネットに書く」などの発言で威嚇し、企業としての社会的責任を追求するタイプ。

従業員を守る〜「孤立させない」ことと「記録を残す」「情報共有」

 企業は、従業員の健康と安全に配慮する義務「安全配慮義務」があります。そのため、従業員の心身の健康を害するカスハラを放置することは、従業員側から損害賠償を請求される可能性もあるのです。まずは、企業としてカスハラに対応することを決め、対策を実施することが解決の一歩といえます。

一人で頑張らせすぎない

 従業員によっては失職を恐れて「自分でなんとかしないと」と頑張りすぎる人もいます。企業側も「難しいお客様への対応も仕事の一部」と捉え、疲弊した従業員(多くの場合、優秀な従業員)が黙って会社を去るケースもあります。対応者を孤立させず、上司・同僚にいつでも頼れる組織風土をつくることが重要です。過去の調査では、カスハラで上司が取り合ってくれなかったのが一番つらかったという結果があります。

再発防止の観点から記録に残す、情報共有する

 どんな些細なことでも記録に残し、情報共有しておきましょう。たまたま大きな問題にならなかったけど、大問題に発展する可能性があります。個人の知識と経験を、組織の知識・経験に変えることが大切です。

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