9月に入った途端、気温が下がってきました、と書いたのは昨年のレターでした。今年は、コロナのこともあり暑さだけを感じる余裕はありませんでしたが、梅雨明けとともにやってきた酷暑のレベルは高く、お疲れの皆さまも多いと思います。夏の暑さに疲れた身体をまずは癒していただきたいと思います。
さて、今注目の話題は何と言っても持病の潰瘍性大腸炎で辞任する意向を表明した安倍晋三首相のことです。今後変化する可能性もありますが、今の段階では、病気で辞任した総理を労るべきであり、批判するな、言葉を変えると去る人の問題点を指摘することは許されない空気があります。確かに病気になり、行政府のトップとしての仕事を遂行できなくなったことは大変残念なことであり、本人にとっても無念でしょう。しかし、この8年間の行政の長(立法の長ではありません)としての業績を客観的に振り返ることは国として当たり前のことであり、重要なことです。そこで出てきた問題を克服していくから、国は発展するのであり、国民は満足するのだと思います。政権としての実績が仮に乏しかったとしても、方向性が正しくそこに向けて努力していたと言うことが分かれば、国民の理解は得られるはずです。
その成果を考えると、ひとまず目の前の新型コロナウィルス(Covid-19)のことで言えば、官民通じて様々な課題が浮き彫りになりました。その代表的なものが生産性、効率性、新しい技術の活用です。コロナ前の日本では、国内では会って話せば良いのでネットを使う必要がありませんでした。特に最終決定を行うトップ(政治家や経営者、官僚)の皆さんがそうです。ネットは若者がゲームで利用するものという意識があったと思います。しかし、海外ではそのようなわけにはいきません。金融市場で言えば、最新の情報を入手する必要があります。欧州ではEUとしてたくさんの国を抱え効率的にビジネスを展開しなければなりません。中国や韓国も、そして東南アジア諸国も広く世界を相手にしなければならない。その点で、進歩的な取組は不可欠であり、必死になって取り組んできました。その結果、新しい技術への取組という点では、まず意識レベルから日本は相当遅れていることが理解されました。
この意識はコロナ後への生き方でも同じです。日本人の多くは、コロナ前の生活に早く戻りたいと思っているように感じます。しかし、前向きに進歩を目指している国々はコロナをきっかけに様々な分野で発想を変えていこうとしています。この半年間、発信力が乏しかった安倍政権がどのような構想を持っていたか正確には分かりませんが、アベノマスクを見ても新しい技術に国民生活を引っ張っていこうという意識はあまりなかったと思われます。
現実的に日本の課題を考えていくことは、安倍政権の批判につながる可能性があります。しかし、その課題を乗り越えていかないと国民は豊かに、幸せになることはできません。まず考えるべき視点はそこにあるのであって、PrimeMinister(プライムミニスター=総理大臣)とはそれだけ厳しい仕事であると言うことではないでしょうか。