ボストーク

ボストーク 湊町レター Letter From Minato-machi 2012年8月1日 №14

 8月です。覚悟はしていたとは言え、やはり暑い!です。多少の気候の変動は我慢しなければなりませんが、この暑さには逆らわないことです。水分を頻繁に取り、冷房を上手に使い、近い距離でも車を利用するなどして酷暑をまともに受け止めない工夫が必要です。ただ、冷房の効かせすぎも体に良くありません。今年は節電で、公共機関だけでなく、ホテルやデパートでも設定温度が高めなのは良いことです。若い頃は、22度くらいに設定しても大丈夫でしたが、中年の域に達することから、設定温度は高めにして、真夏でも長袖にするようにしました。酷暑もまずは8月中旬がメドです。オリンピックでの寝不足にも注意して乗り切りましょう。

 さて、先月に引き続き消費税です。前回は、消費税の税率が引き上げられても、中小企業者は価格転嫁できないという話を書きました。ちょっと表現が難しかったのと、重要な問題ですから、今月もこの問題を取り上げたいと思います。

 まず消費税は、各取引段階で、価格に転嫁されることが理論的な背景にあり、政府からも説明されています。100 円の取引であれば5 円が消費税として上乗せされ、売主はその5円の消費税を納税します(仕入にかかった税額はここでは無視します)。ここで消費税率が5%から10%に引き上げられれば、5 円の消費税が10 円になり、販売価格総額は110 円となります。これが理想的にすべての取引に適用されれば問題はありません。しかし、買い手が110 円では納得せず、107 円での取引を要求すればどうなるでしょうか。本体価格98円+消費税9 円=107 円となり、本体価格は2%の値引きをしたことになります。

 「そんなことを言わず、110 円を貫けば良いじゃないか」という意見があるかもしれません。しかし、それは商売の実態、今のデフレ経済下の厳しい経営環境を知らない人の意見です。競争原理が働く市場では常に価格は変動するものであり、絶対的な価格など存在しません。同業者が106 円で攻勢をかけてくる可能性もあります。消費税があってもなくても、最終消費者も含めた取引先との関係では、価格は最も重要な駆け引きの項目です。

 また、「2%くらい何とかなるのではないか?」という意見もあるかもしれません。しかし、100 円だとたかだか2 円ですが、1 億円だと200 万円です。売上高1 億円の企業が、200万円のコスト削減を行うことはとても難しいことです。それに、そもそも消費税の増税部分をなぜ企業努力で吸収しなければならないのでしょうか。その理屈だと、消費税は、消費者が負担するのではなく、企業が努力して負担していることになります。

 マスコミの報道によると、政府は、下請業者に対して、増税分が円滑に転嫁されるような措置を考えるとされています。しかし、それでは価格統制を容認することになりますし、またそのような措置で増税分の企業負担が軽減されるほど、現在の経済環境は決して楽観的なものではありません。

 こう考えると、財政が厳しいから消費税に手を付けると言うだけではあまりに単純です。