F&Aレポート

敬語は距離間隔 どんな球を投げれば相手が無理なくキャッチできるか

挨拶は「積極的防犯」!!

 タクシーには通常、運転席と後部座席の間に防犯のアクリル板(防犯板)があります。これは言うまでもなく乗務員の命と安全を守るために設置されたものです。しかし、私が知るタクシーはあえて防犯板を取り付けていません。それも、会社側が一度は取り付けたものの乗務員、それも女性の乗務員からの申し出によって取り外したというのです。

 その女性乗務員は、「防犯板があると、ドライバーからお客様が見えにくくなるんです。これは返って危ない。お客様が乗られるときに、笑顔で振り返ってアイコンタクトをとり、大きな声で挨拶をする。その方がずっと防犯には効果的なんです。」と、言ったそうです。

 このタクシー会社では、防犯板をあえて取り付けないことを「積極的防犯」と呼び、お客様と目を合わせて、声に張りを持たせて、しっかり挨拶をすることを訓練しています。

 実際、挨拶は犯罪の抑止力になることがあります。たとえば、泥棒が犯行をあきらめた理由で最も多いのは「近所の人に声をかけられた」「近所の人からじろじろ見られた」などです。不審者は声をかけられ、顔を見られることを嫌います。犯行がばれやすくなるからです。また、声をかけることで「この地域は防犯意識が高い」と、警戒することもあるようです。挨拶をすることで不審者を寄せ付けない効果もあるということです。

 コツは漠然と見るのではなく、目の黒いところをしっかり見るということです。目の色、表情、輝きなどから、相手の状態を観察するのです。「この人は今、どんな状態なのか。体調は良さそうか?疲れているのか?焦っているのか?心配事がありそうか?何か違和感があるか?危険な人物ではないか?」などを、一瞬のうちに感じ取るのです。

 「心の目(心眼)を開いてしっかり見る」ことは、相手を知る重要なコミュニケーションであり、時に自分を守るスキルとなるのではないでしょうか。