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ことばのちから「言葉は思考の土台」6 ~世界に誇る日本紋様の名前と意味

ことばのちから「言葉は思考の土台」6 ~世界に誇る日本紋様の名前と意味


 東京オリンピック開催についての議論が高まる昨今ですが、東京オリンピックのエンブレムにもなった「市松紋様」(市松模様)は、世界に誇る日本紋様の代表格のひとつです。「市松紋様」は、四角形を交互に敷き詰めた石畳紋様を、江戸時代の歌舞伎役者である初代佐野川市松が舞台で用いたことから大流行し、市松紋様と呼ばれるようになりました。

 最近では、世界的にも大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」の主人公 竈門炭治郎の着物の柄(緑×黒の市松模様)としても描かれています。

 日本紋様の意味や名前、由来など知らずとも、私たちの身の回りには、住居、インテリア、小物、衣類などのあらゆるところにデザインされ、時代を経た今もなお静かに息づいています。

 吉祥紋様(きっしょうもんよう)(縁起の良い柄)ともよばれる日本紋様は数多く存在しますが、その一部をご紹介します。古来日本人の美意識を感じてみたいと思います。

1、鱗紋(うろこもん)


 市松模様が四角形の連続なら、鱗紋は三角形の連続です。鱗は魚ではなく、龍や蛇、蝶などと関連し、脱皮を表すともいわれます。厄落とし、再生、厄除けの紋様。古くは古墳や埴輪の装飾にも見られます。武士の陣羽織(じんばおり)や能装束にも用いられましたが、意外にも古来から世界各地にみられ、邪気払いとして使用されました。ちなみに東京スカイツリーには、至るところに鱗紋が見られます。スカイツリーの外観だけでなく、床のタイルや天井やなどにも三角形の連続模様が見られます。

2、立涌(たてわく)


 雲気や水蒸気が立ち上がるさまを紋様化したもので、貴族の装束や能の装束に用いられた格式高い紋様のひとつ。運気を運び上昇を意味する縁起の良い紋様です。

3、青海波(せいがいは)


 大海原に絶えず繰り返される波のように、平穏が続くよう願いが込められた紋様。舞楽「青海波」の装束になったことに由来するともいわれています。古くから吉事に用います。

4、七宝つなぎ(しっぽうつなぎ)


 円の円周を四分の一ずつ重ね、上下左右に連続させた紋様。輪ちがいつなぎ紋ともいいます。四方どちらへも永遠につなぎ縁起の良いことから四方→「七宝」と呼ぶようになったと言われます。七つの宝とは、金、銀、瑠璃、めのう、珊瑚、水晶、真珠。

5、波千鳥 千鳥紋(なみちどり ちどりもん)


 群れになって飛ぶ千鳥の様子を描いた模様。オスとメスが揃って子育てをする千鳥にあやかって、家内安全、夫婦円満の願いが込められています。格子状に千鳥を組む「千鳥格子」は、この紋様を単純化したもの。

*「伊勢型紙」について*

 日本人の自然観や季節感、美意識を高度な技術で紋様化した工芸品や美術品は、海外でも高い評価を受け、19世紀には浮世絵とともに、世界に「ジャポニズム」旋風を巻き起こしました。

 中でも「伊勢型紙」と呼ばれるものは、柿渋和紙に彫刻した着物の紋様を染める原型のことで、千年あまりの歴史があります。伊勢湾を臨む産地(三重県)に由来し「伊勢型紙」と呼ばれ、江戸時代に紀州藩の保護を受け飛躍的な発展を遂げました。現在もその技術は受け継がれており、重要文化財に指定されています。欧米では「KATAGAMI」として注目され、意匠芸術として世界に誇れる「日本の文化遺産」となっています。

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