F&Aレポート

「受講者の顔が見えるオンライン講座」気疲れと面白さ

「受講者の顔が見えるオンライン講座」気疲れと面白さ

 コロナの影響を受けて、昨年から「オンライン講座」が増えてきました。ひとことで「オンライン講座」と言っても色々な形態があります。

 比較的よくあるのは、パワーポイントの資料を画面共有しながら、片隅に講師が小さく写っている感じのもので、受講している人たちの顔は画面には映りません。これは決められた時間内に決められたプログラムを終えやすく、そつなく進められるメリットがある一方で、受講者が受け身になりやすいというデメリットがあります。

 そんな中、『受講者の顔が見えるオンライン講座』では、受講者の顔は常に全員画面上に出ています。受講数、スクリーンの大きさにもよりますが、講師、受講者とも、顔や表情、背景なども確認できます。私自身の講師体験から、こういった講座の特徴や面白さ、注意点などご紹介します。オンライン会議や採用活動などでも参考になるかもしれません。

1、いつ指名されるかわからない!というドキドキ感

 パワーポイントの資料は基本使いません。使用する資料は、事前に受講生に送ります。当日は各自、手元に資料を準備していただき、画面上には全員の顔だけが写っている状態で研修を進めます。

 講師からすると、リアル研修と同じように受講者の顔が見えるわけですが、受講者は全員の顔と、自分の顔をずっと見ながら講座を受けることになります。

 ある男性は「自分の顔をこんなに長く見たことがない」と、言っていました。あらためて自分の髪型や表情などを意識したと言います。

 また、『受講者の顔が見えるオンライン講座』では、急に指名されることもあります。これはリアル研修と同じですが、オンライン上でわかるように表現しないといけないので、カメラ目線や声の大きさなど、意識しながら発言しなければなりません。ボーッと受講していると隙をつかれるので緊張感を持ちながら受講することになります。

2、ブレイクアウトセッションですすめるグーループワーク

 リアル研修の醍醐味のひとつはグループワークです。オンラインでも、ブレイクアウトセッション機能を使えば、グループワークをすることは可能です。オンライン越しの初対面の人たちに対して、自己紹介をして議論を深めます。講師から出された課題について限られた時間で話し合い、ワーク後にその結果をメイン画面に戻って講師と、ほかの受講者に報告します。発言力、表現力、聞く力が求められます。

3、ブレイクアウトセッションの『盗み聞き』

 ここで面白いのが、いわゆる『盗み聞き』です。講師は自由に各グループに参加することができます。それも『透明人間』のように姿を消し、その様子を観察することができるのです。これはリアル研修にはない面白さです。

 ワークをしていても講師が混ざると(講師が観察しているだけでも)、自由な議論に水を差すこともあります。オンラインでは、受講者に気づかれることなく、そっと盗み聞き、盗み見ができるので、受講者の『素』の声、『素』の表情を観察することができるのです。

 そこでの様子を把握しながら、その後、補足説明をしたり、思わぬところに話を展開させて新たな気づきを得ることができます。

4、目疲れ、気疲れ、耳疲れ、だけど面白い

 先日の講座では、「トラブルを上司に報告し解決策を提案し、上司を動かす」というケーススタディをしました。それぞれのグループで上司役、部下役、観察してフィードバックする人の役を決めて行うのです。

 オンラインの画面上で初対面の人同士、演じて、何が重要なのか話し合います。盗み聞きしてみると、「実際にはこんなこと起きないんじゃない?」「情報が少ないからわからないよね」と、どこか投げやりな人もいれば、そんな人をうまくフォローしながら、なんとかグループとしてまとめようとしている人など、その人の特徴がはっきり見えます。

 中には「マナーよりも人間力でしょう!」と、テーマとはズレた持論を述べる人も。

 そんな声も「ところで、人間力ってなんでしょうね?」と、指名して気づきを促すきっかけになることもあります。『受講者の顔の見えるオンライン講座』は、デジタル特有の目疲れ、気疲れ、耳疲れもあるのですが、活用次第では非常に面白い講座になることもあります。