現時点から10年後をイメージした際、どこまでAIによって代替されているかを見える化した「AI化率」と称し、今ある仕事が10年後にどうなっていくのかを考えてみたいと思います。「10年後のハローワーク(川村秀憲著)」
「ホワイトカラー」 AI化率70%事務職、営業職、研究職、技術職、販売職、管理職ほか
現時点においても、ChatGPTに代表される生成AIは、大卒程度の事務処理能力は持っていると考えられます。企業においてカスタマイズした学習をさせることも容易です。
優秀な大卒の人間一人を40年以上雇う場合にかかる数億円の人件費と、生成AIを導入するコストを比較した場合を考えれば、結論は明らかです。
OA (オフィス・オートメーション)というと、かなり昔の感覚になりますが、ワープロ、パソコン、コピー機、業務管理システム、DXの流れがやってきたことで、これまでも事務職の「椅子」は減ってきたわけです。来訪者は無人の受付でQRコードをかざし、出てくるお茶はペットボトル。かつてはその過程にも人がいました。
2023年、アメリカの有名なテック企業は雇用を減らし始めました。AIによってホワイトカラーが必要なくなってしまったのです。ただその形態はゼロサムの形ではないと考えられます。具体的には「意思決定」に至るまでのプロセスがAIに代替されます。「情報を収集する」「情報をまとめる」といった作業です。本当に必要なのは資料ではなく「意思決定」です。多くのホワイトカラーが、今までの「頭脳労働者」の感覚を捨て、自ら意思決定する側に回らなければなりません。
「その人の名前がブランド化している」状態が、意思決定できる姿です。「属人化」は悪いキーワードと思われてきましたが、AI普及後は、人から切り離せない仕事こそ残るのです。AIは、その事実を明確にしていくことになります。
「金融」 AI化率90%銀行、保険会社、証券会社ほか AI 化が最も進む業界
金融業は、お金を集め、お金を融通していく仕組みですが、そのさまざまな過程においてAIのほうが人よりも上手に、しかも効率的に有利な答えを出すことができます。結果として「意思決定」できる人だけが残り、金融業界の利益率はよくなります。
本格的なAI登場前から、金融業界では情報化による効率化の波が押し寄せています。外交員の代わりにスマホで保険の見積もりを取れるようになりました。ネットバンキングやネット取引が普及し、銀行や証券会社の店頭に出向く必要性は激減しました。多くの店舗が統合や閉鎖をとなりました。こうした状況にAIはさらなる変化をもたらします。
金融業の本質は、貸出先や投資先のリスクターン、保険の引き受け条件やマーケット情報の分析にあるからです。AIはその分析作業を迅速かつ正確に行います。金融はもともと確率を追い求めるビジネスだといえますが、それこそまさにAI の得意分野です。
融資先の信用力が、AIにより安価で確度の高い分析で見定められるなら、銀行を通さず高い利回りを狙って行うソーシャルレンディングなどの直接金融が一段と発達しやすくなり、銀行の領域を一層侵食する可能性もあります。保険業界も同様です。
AI 化率90%。残る10%は、決してAIには担えない判断が含まれます。たとえば、海のものとも山のものともつかない、検証できるデータがない新しいビジネスです。AIが分析すれば高リスク、投資不適格となるかもしれませんが、未来予測ができて意思決定できる人には、そこには大きな投資や融資のチャンスが見いだせるかもしれません。
いずれの業種でも「意思決定」できる超プロは生き残る
その他の職業について10年後のAI化率は次の通り。メーカー(飲食、化粧品、家電、衣料ほか)AI化率50%、商社(営業、企画、貿易事務ほか)AI化率50%、マスコミ(テレビ局、出版社、新聞社、記者、カメラマンほか)AI化率50%、小売(デパート、スーパーコンビニほか)AI化率70%、プログラミング AI化率80%、公務員 AI化率60%、学校・教育AI化率30%、医療AI化率40%、法律司法AI化率60%、接客業AI化率70%、サービスAI化率10%など。いずれも、意思決定できる人、超プロは生き残ると考えられます。