アフターコロナの生き方~信頼経済へのシフト「個人が中心の時代」
『学問のすすめ』が出版されたのは1872年のこと。その本の中で、資本主義という新世界での生き方がまとめられています。それから148年を経た2020年、コロナ
ショックによって資本主義から「信頼経済」への転換がはじまろうとしています。「信頼経済」は私たちにとっての新世界です。(人類2.0アフターコロナの生き方 小林慎和著 プレジデント社)
1、アフターコロナの新世界「誰と動くか」
人が人を信頼するために必要なことはなんでしょう?一度も会ったことがなくても相手を信頼できるリモートトラストをどのように構築すればいいでしょう?単に物事を公明正大に処理するだけであれば、それはAIとブロックチェーンが対応してくれます。この技術がリモートトラストをさらに浸透させることになります。あらゆることをオンラインで進められるようになったとき、私たちは世界のどこにいても、世界中をフィールドとして生きていくことができるようになります。
未知のウイルスによってリアルで会えない時間が続くけれど、それでも私たちは生きていかねばならないし、ビジネスを進めていかねばならない。コロナショックによって、確実に人は一歩進んだのです。私たちが想像するよりも、個人のパワーが遥かに増大したのです。たとえ自宅にいながらでも、個人ができることが急速に拡大したのです。
そこで大事なのは、アフターコロナの新世界は「個人が中心の時代」になるということ。
資本主義の下では、企業と企業の協業によって世界は急速に発展してきました。しかし次の時代では、個人と個人、または個人と企業で協業し、世界を変革していくことができるようになります。
だからこそ、次の時代では「誰と」動くのかが重要になる。
2、求められるのは「意味がある人」「置き換えできない人」
AIは、企業のあらゆる事業の仕組みをデジタル化させていくもの。これまでの資本主義を支えてきた知的労働者の役割が、AIによる自動分析に置き換わっていくのです。AI登場以前に貴重とされていた「役立つスキル」が、突如コモディティ(代替可能)化してしまう可能性が出てきました。
これまで、「むずかしい」とされてきた仕事や分析作業などを進めていくために必要なのは、スキルを持つ人ではなく、それを処理できるコンピュータです。AIが処理できるようなものは、極限まで効率的に処理する方向に進んでいくでしょう。単に役に立つスキルを持つ人の必要性は低くなり、そこにいることに「意味がある人」が求められます。
ここでいう「意味がある人」とは、たとえば、その人がいるからそれに関わるメンバーの人たちは笑顔になる、やる気が起きる、場が和む、その人がいるから交渉相手がテーブルについてくれる。そんなことを指しています。いわば、置き換えが利きにくい存在感があるということです。
3、「信頼経済」
誰を選ぶべきか。どのような人が選ばれるのか。それは、「信頼貯金」がカギとなります。高度な処理はAIやブロックチェーンという技術が解決してくれます。でも、信頼というのは、機械のように単に役に立つからという理由では蓄積されていきません。相手にとって、意味があるかどうかが重要になります。結局信頼とは、相手にとって意味があるかどうかを想像し、意味のあることを実行することで蓄積できるのではないかと思います。そうして蓄積された信頼によって、人と人との動きは加速していきます。それが、これからくるであろう「信頼経済」です。コロナショックによって資本主義から信頼経済への転換が始まろうとしています。