人づくり~ジェネレーション・ギャップ「レッテル貼り」は要注意
◆ 「レッテル貼り」とは、人や物事に対する特定の評価のことをいい、一方的に評価や判断を下すことをいいます。たとえば、「あの人は消極的な人間だ」とか、「この店のサービスは、いつもレベルが低い」などです。
レッテル貼りをすることで、人や物事についておおまかな理解ができるかもしれませんが、あくまでも主観的ものなので、必ずしもそうではないこともあります。むしろ「レッテリ貼り」はひとつの意見や見方なのだと捉える方が賢明です。特に人間関係においては要注意といえるでしょう。
◆ ジェネレーション・ギャップとは、世代間のズレ。世代によって文化や価値観がちがい、会話が成り立たない、言葉が通じない、共通認識を得るのが難しいことをいいます。
今は、どこの企業に行っても「人が育っていない」「人が採用できない」という声を耳にします。年代ごとにバランスよく採用できていた80年代以前と今とでは、市場も職場の状況も大きく変わっています。人手不足の厳しい社会の中でやっと確保できた人材をいかに成長させるか。今、多くの管理職は現場でこの課題に日々向き合っています。世代間ギャップに悩み、関係の改善をはかりつつある田中さんのケースをご紹介します。
注意をしたらパワハラ呼ばわりか?
製造業(中小企業)に勤務する40代の田中課長は、中途採用で入社した20代の鈴木さんの指導に悩んでいます。鈴木さんは真面目な性格ですが、何を言っても反応が悪く、業務を教えてもなかなか覚えません。報連相も中途半端なため、田中課長は日々イライラが募る毎日です。
それでも辛抱強く関わる田中課長ですが、ある日A商品の納期が迫る中、鈴木さんが以前と同じミスをしたため、とうとう堪忍袋の尾が切れてしまいました。
「何回言ったらわかるんだ!この前も同じミスをしただろう。本気でやってるのか?」と、皆の前で怒鳴ってしまったのです。鈴木さんは小さな声で「申し訳ありません」と言ったものの、翌日からコミュニケーションはギスギスし、他の若手社員まで田中課長を敬遠するようになりました。田中課長はやりづらさを感じ、不快な思いで過ごしていました。
そんな中、田中課長は上司から呼び出され「鈴木さんが、あなたからパワハラを受けたと言っています」という注意を受けました。田中課長は状況を説明し理解をしてもらえましたが、言い方にはくれぐれも気をつけるようにと釘を刺されました。田中課長はやり場のない虚しさを感じました。田中課長の言い分は以下の通りです。
「最近の若い子は何を考えているのかさっぱりわかりません。まず基本がなってないんですよ。仕事に対するやる気が薄い。コミュニケーション力もないし報連相もできない。勝手に判断して失敗する。注意をしたらパワハラだと騒ぎ立てる。仕事で注意をするのは当たり前でしょう。怒鳴ったことは悪いにしても、注意もできないとなると、どう指導していいかわかりませんよ」
安易な「レッテル貼り」を外して、まずは向き合う
どこでもよくあるケースのようです。ここで気になるのが「最近の若い子は」というレッテル貼りです。「最近の若い子」と一括りにせず、まずは鈴木さん自信を理解するために、鈴木さんの視点で考えてみるとどうでしょうか。また入社して間もないころの田中課長自身はどうだったのでしょうか。不安や迷いがあったときに適切に対処ができていたのでしょうか。田中課長自身が優秀な人材で若い頃から仕事ができるタイプであったとしても、苦手な人やコトはあったはずです。
「若い子」という表面的なコミュニケーションでなく、「鈴木さん自身」を理解するよう努めてはどうでしょうか。今仕事で何に困っているのかを聴き、共に解決できることがあれば解決に向けて考え、行動することが信頼関係をつくる大前提なのではないでしょうか。また、田中課長が「これだけは重要」と考えることを整理して伝えることも必要です。
実際に田中課長は、その後上記のことを実行し、鈴木さんとの関係を取り戻していきました。鈴木さんは基本的な仕事のスキルを教えてもらったことがなく、田中課長の指導の意味も理解ができなかったようでした。これらを通して田中課長自身も「共に協力する仲間」としての視点が欠けていたことに気づき反省しました。鈴木さんからの報連相も的確になり、鈴木さんの仕事の進め方も、コミュニケーションも改善されていくのを田中課長は実感しています。