F&Aレポート

冬じたく~「障子」と「障子貼る」

冬じたく~「障子」と「障子貼る」

 11月7日は立冬。今年は、昼間の気温が20度を上回る地域もありましたので、冬という感覚はまだ少ないかもしれませんが、暦の上ではもう冬が始まっています。

 昔は日本では立冬を迎える頃から「冬じたく」といって、文字通り冬を迎えるしたくが始まりました。その代表的なもののひとつが障子を貼ることでした。

 障子は、夏の間は涼をとるためにはずして物置などに納めていました。その障子を取り出し、敷居に設置する前に障子紙を貼り変えるのです。米などで適当な濃さに作った糊を刷毛で塗って障子の形に切った和紙を一気に貼ります。家族で協力しながら障子を張り替えるのが、本格的な冬の前の風物詩だったと、母から聞いたことがあります。

 ひとつの部屋を夏と冬で使い分けるという習慣に、先人の知恵を感じます。障子を貼り替えると障子の白さで部屋の中が明るくなり、同時に冬のピンと張り詰めた空気が、障子(和紙)で和らぎ、なんともいえない温かみが感じられたそうです。

 このように、冬を迎える前に障子貼るので「障子貼る」は秋の季語で、「障子」は冬の季語です。障子と同様に、襖(ふすま)も「襖貼る」は秋、「襖」は冬の季語です。

 とはいえ、今の住居環境では、障子や襖がどれくらい普及しているでしょうか。障子や襖のある家自体が少なく、まして「障子を貼る」「襖を貼る」なんて都会では滅多にお目にかかれない光景の気がします。今の子どもたちには、とてもイメージできない風物詩なのかもしれません。