F&Aレポート

「新札」にみる魔力

「新札」にみる魔力

 私が利用する近所の美容院はいつも新札を準備していて、一万円札を出すと、新札でおつりが返ってきます。最初は「たまたま新札があったのかな?」という程度でしたが、毎回新札をいただくと、さすがに気になり、ある時オーナーさんに尋ねてみました。「毎日、新札を準備されているのですか?」と。答えは、満面の笑みで「YES」でした。

 美容院がお休みの月曜日には、一週間分の新札を準備するため、銀行や郵便局を廻っているとのこと。最近は新札に両替するのも限度額があって大変なのだそうです。お店をオープンして以来10年近く、ずっと新札を準備しているということでした。

 なぜそこまで新札にこだわるのか?答えは簡単でした。「髪をきれいに整えてくださったお客様には、最後まで気持ちよくお帰りいただきたいから。新札をもらうと気持ちいいですよね。些細なことですが…」と。

 その美容院は、若い女性二人で頑張っている小さな美容院です。決して大きなチェーン店ではないのです。10年間、お客様のために毎日新札を準備されていることに、商売に対する真摯な姿勢を感じました。

 閑話休題。あるときタクシーに乗ったときのこと。料金を支払うのに、新札の千円札を出すと、乗務員さんに「あっ、新札ですね、ありがとうございます」と、言われました。私は不思議に思い、なぜ新札が良いのか尋ねました。すると、「新札をいただくと気持ちいい」ということでした。それだけでなく、「新札を出してくれるお客様は、感じがいい」とのこと。そういえば、受講費などをいただく場合も、新札でいただくと、「わざわざ準備してくださったのだ」と感じ、嬉しくなります。結婚式などのお祝儀も同様でしょう。

 サービスをする側と、サービスを受ける側。支払う側と、受け取る側がお互い気持ちよくなるだけでなく、お金と人の価値を高めてくれるのが「新札の魔力」なのでしょう。