新入社員ビジネスマナー研修:最近の光景から「漢字や文章を読めない人が多い」?
研修中、あえて文章を読んでもらうことがあります。それは、受講者の眠気防止のためだけでなく受講者の国語力を測るためでもあります。そこで最近目立つのは、漢字をまともに読めない人が多いことです。また、報告書を書いてもあて字が多いのと、そもそもの漢字を間違って書いている人が多いのが目立ちます。漢字を書けなくてもパソコンやスマホがあれば困らないのでしょうが、語彙が少ないのは表現力の低下につながります。
語彙力は意識して身につけるものです。放っていて自然に身に付くものではないのです。新入社員もベテラン社員も語彙を増やして伝える力を豊かにしてみてはいかがでしょうか。「語彙力がないまま社会人になってしまった人へ」(ワニブックス 山口謠司著)
■仰るとおり(おっしゃる):「なるほど」が多い人は“信用”も“信頼”もされない
「話し上手は聞き上手」と言われます。できる人ほど、自分の意見をダラダラ述べるより、むしろ相手の話に耳を傾けているものです。
討論会やラジオ番組などでも、話がうまい人は場の雰囲気をつかんでいます。他者の話を聞くだけ聞き、ここぞというときに大事なことをさらりと言って、説得したり、新しい話題を提供していきます。
「私は」「私は」と自分の主張だけをする人は、煙たがられ嫌がられてしまい、かえって話を聞いてもらえないものです。
ただし、人の話に耳を傾けているのはいいことですが、相手が何かいうたびに「なるほど」とあいづちを打つのはいただけません。「なるほど」という言葉は、あまりいい言葉ではないからです。
実は「なるほど」という言葉は、室町時代末期、江戸時代初期頃から俗語として使われている言葉で、公式の場では使わない方がいいものなのです。
もともと、「なるほど」は、「なるべきほど」という言葉の「べき」が省略されて短くなったものです。「なるべきほど」とは、現代語では「可能な限り」「できるだけ」という意味だと捉えることができます。「可能な限り」という意味の「なるべきほど」は、「なるべく」や「なるたけ」などにも変化していきます。
つまり、「いかにも相手の言っていることが理屈に合っているかどうか、できるだけ確かめてみよう」というような、ちょっと意地の悪い意味を背景にしているので、あいづちのときの言葉としてはふさわしくないのです。
とりあえず「“なるほど”と答えておけば、会話がスムーズにすすむだろう」という安易な考えをするべきではありません。「なるほど」を多用する人は、あまりものを考えていないのではないでしょうか。思考を停止して話をしていれば、それは相手に伝わります。
会話の相手が人間力のある人なら、それを見抜かれて、信用、信頼を失ってしまうことになりかねません。
「なるほど」ではなく、「確かに」「もっともですね」「ごもっとも」という言い方もいいでしょう。最も品格を感じさせるのは「仰るとおり」です。
「仰るとおり」は、話を吟味し、納得したときにこそ出る言葉です。さらに「ご指摘のとおり」「ご明察のとおり」など、ひとつ上の言い方も、時には使ってみると相手の評価も変わります。
■「なるほどですね」は間違い
「なるほどですね?」というあいづちを時々耳にします。これは「なるほど」+「そうですね」の略語です。本来「なるほど」が「なるべきほど」の省略ですから、省略してさらに省略していることになります。ことほどさように、省略後で軽くあしらわれた感じが否めません。決して軽くあしらったつもりはないのに、そんな印象を相手に与えてしまうのは大変残念なことですね。気をつけたい言葉です。