F&Aレポート

リーダーの「声」が最高のチームをつくる 「最高のリーダーは何もしない」に学ぶ、リーダーの言葉力

リーダーの「声」が最高のチームをつくる 「最高のリーダーは何もしない」に学ぶ、リーダーの言葉力

■ビジョンを社員に浸透させる、最も有効な方法は「リーダーが自らの声で語る」こと。組織が大きくなると、メンバー全員に向かって語る機会は少なくなり、動画やメールなどの便利なツールでメッセージを伝えることも多いかと思いますが、リーダーが肉声で、メンバーに直接、何度も何度も語りかけることが最も強力だといいます。■当然のことながら、ビジョンに対して最も強い「思い入れ」を持てるのは、リーダー自身。本人が自分の声を使って直接伝えようとしない限り、メンバーにはなかなか伝わりません。ちょっとした紙を配ったり、ミーティングで一度話をしたぐらいでは、リーダーの思いはまず理解されないと思ったほうがいいでしょう。■「最高のリーダーは何もしない」(ダイヤモンド社)の著者 藤沢久美氏が1,000人以上のトップリーダーにインタビューして、リーダーシップについて語る「リーダーの言葉力」についてご紹介します。

1.リーダーにとって唯一の仕事道具は「言葉」

 合宿をする、クレド(行動指針)をつくるなど、ビジョンを隅々にまで浸透させる方法はありますが、突き詰めて言えば、やはりビジョンの伝達の本質は「言葉の力」です。

 リーダーの唯一かつ最強の仕事道具は「言葉」なのです。

 そこで一つだけ注意をお伝えしておきます。それは、「リーダー自身の言葉が持つ力」に自覚を持つことです。リーダーは誰よりも言葉に敏感でなければなりません。

 組織内のポジションが上がるほど、リーダーがうっかり発した言葉で、人や組織が思わぬ方向に動いてしまうようになります。メンバーたちに納得してもらえるような言葉選びや言葉遣いをしなければならないのがリーダーなのです。

 リーダーの発した言葉で、チーム内に不協和が生じたり、プロジェクトが滞ったりするということは、リーダー自身がまだまだチーム全体を高解像度で見られていない証拠です。

 たとえば、「最近の営業1課はダメだね」と何気なくリーダーが言うだけでも、チーム全体のなかには「じゃあ、営業1課と組むのはやめよう…」といったムードが広がります。その結果、営業1課の成績がさらに悪化するという事態につながるかもしれません。

 またメンバーの間には、「うちのリーダーは表裏のある人だ」というイメージが広がっていれば、つねにリーダーの言葉の「裏」を読もうとするようになりますから、伝えたいことの真意が伝わりづらくなっていくでしょう。

2.まずはリーダー自身が「腹落ち」しているか

 実のところ、「ビジョンを伝える」という仕事において最も重要なのは、現場に語りかける以前に、当のリーダー本人が心からそのビジョンに信念を抱いているかということです。

 創業社長でもない限り、ビジョンをゼロベースからつくりあげたリーダーはいないでしょう。先代から経営理念を引き継いだ社長はもちろんですが、中間管理職の方々も「本当にそれがあなたの信念ですか?」と聞かれれば戸惑うケースのほうが多いのではないでしょうか。しかし、まずもってリーダー本人がそのビジョンに共感していなければ、どんなに伝え方を工夫したところで、メンバーの心の底にまでビジョンが浸透することはありません。ビジョンに対して表面的に共感したふりをしていても、メンバーからは容易に見透かされます。自らの納得感がなければ、立派なビジョンも「空虚な言葉」でしかないことを心得るべきです。先代からずっと継承されてきた考え方だとしても、まずはそれについて徹底的に考え直し、それを我がものとしていくプロセスが必要なのです。

 朝礼、会議、酒席など、繰り返し繰り返しビジョンを語る社長は、メンバーだけではなく自分自身にも、そのビジョンを深く刻み込んでいるのだと言えます。人に話しているようでいて、実は自分に語りかけている。その意味では、自己暗示とも言えるかもしれません。語れば語るほどビジョンの精度が増し、自らの考えが整理されていく、ある種の自己強化プロセスを取り入れているのです。

 つねに誠実かつ正しい言葉を使うことは、リーダーが心がけるべき最重要課題です。また、広く共感を呼ぶようなビジョンを言語化するには、研ぎ澄まされた言葉の力が必要です。言葉こそがリーダーの力の源泉であり、言葉の修練はリーダーには不可欠なのです。