F&Aレポート

「Z世代のヒーロー」ある日の光景

 先日、とても素敵な光景を目にしました。たくさんのビラが入った箱を積んで、台車を押しながら横断歩道を渡っていた一人の若い女性がいました。片側3車線ずつある横断歩道の半分を渡ったところで、台車が道路に引っかかって、動けなくなってしまいました。信号は点滅し始めました。市街中心部の人も車も多い通りです。

 側を歩いていた私は思わず足を止めて「手伝いますよ」と言い、台車に手をかけようとしたところ、横断歩道を渡り終えたはずの若者が疾風のごとく駆け寄ってきて、台車ごとヒョイと持ち上げて横断歩道の向こう岸へ運んでくれました。白いTシャツの袖からのぞく筋肉質の腕がまぶしく見えました。一瞬の出来事でした。

 台車を押していた女性は、大きな声で「ありがとうございました!」と、頭を下げていましたが、その若者は少し微笑んだだけで遠ざかっていきました。

 太陽がジリジリと照りつける土曜日の午後でしたが、涼風が吹いた後のように、私の胸はスッキリしていました。まるでスーパーマンのようで、彼のような人を「ヒーロー」と呼ぶのではないかと思いました。

「Z世代」とは、1990年代後半から2010年代前半に生まれた人を指すと言われています。10代半ばから30歳ぐらいの年齢に当たります。

 彼らは、いわゆる「デジタルネイティブ」で、多様性を重んじ、個人主義で自分らしさや自己表現を大事にすると言われています。インスタグラムや、TikTokなどで情報を発信・収集するのも、息をするかのように自然にやってのけます。

 一方で、会社に就職しても見極めが早く、すぐに辞めてしまうとか、飲み会には参加せず、休憩中もスマホを眺めているので、どうコミュニケーションをはかればいいのか悩むという話も聞きます。どちらかというと、負の側面を指摘されることが多いZ世代かもしれませんが、いやいやどうよ?捨てたもんじゃないでしょう「Z世代」。いえ、日本の若者!あっぱれな光景を見せてくれたヒーローの姿は今も瞼の奥に焼き付いています。