F&Aレポート

「黄金ひぐるま」行く夏を惜しんで 与謝野晶子に学ぶ

「黄金ひぐるま」行く夏を惜しんで 与謝野晶子に学ぶ

 もうすぐ処暑だというのに、今年は残暑がことのほか厳しくて実感がわきません。処暑とは二十四節気の一つで8月23日頃。暑さが終わるという意味です。
 「黄金ひぐるま」はひまわり。太陽に向かってまだ元気に咲いています。今回は行く夏を惜しんで、「黄金ひぐるま」を詠んだ与謝野晶子のエネルギッシュな生き方をご紹介します。太陽に討たれて疲れた心と身体に力を与えてくれるかもしれません。

   髪に挿せば かくやくと射る夏の日や
    王者の花のこがねひぐるま

 与謝野晶子の生き方そのものが「黄金ひぐるま」のようだったと言われています。照りつける真夏の太陽のもと背筋を伸ばしてゆらりと立っている感じです。
 晶子は歌だけでなく、評論にも古典の研究にも優れた仕事を残していますが、その傍らで11人の子どもを産み育てました。家計も楽ではなく、晶子の収入が一家の支えでした。何かの会に招かれても着てゆく着物がなく、あり合わせの無地の着物に、金泥で、袖から胸にかけて自分の歌をさっと書き付けて行ったのが、周囲の女性たちの評判になったそうです。
 また、35歳でパリ旅行をしたときには、友禅の振袖の着物に大きな帽子をかぶり、その帽子に真っ赤な芍薬の花を飾っていたとか。おしゃれなパリジェンヌ達も圧倒したといわれています。

   巴里(ぱりい)なるオペラの前の大海に
    われもただよう夏の夕暮れ

 生涯に五万首という驚異的な数の歌を詠んだ晶子。情熱の大輪のようなその生き方に残暑を乗り切る力をあやかりたいですね。(参考図書 美しいことばの抽きだし 藤久ミネ著

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