F&Aレポート

椅子に座るときも背筋はシャンと「背筋が伸びると呼吸が楽になる」 

椅子に座るときも背筋はシャンと「背筋が伸びると呼吸が楽になる」 

 前回の「正座の意味と、疲れない座り方」につづいて、椅子の座り方についてです。

 もともと武士は、あぐらや膝をたてて座っていましたが、江戸時代に正座が中心となりました。しかし、現代の社会生活では、正座をする機会は非常に少なく、椅子に座ることの方が圧倒的に多いといえます。特にデスクワークをする人にとっては、一日の大半を椅子に座って過ごすことになります。

 武家の礼法を継承する上田宗箇流の礼法入では、「背筋が伸びると呼吸が楽になる」といい、椅子に腰掛けているときも背筋が伸びていないと疲れるといいます。首が曲がっていては、重い頭が支えられず、前かがみになります。そうすると内蔵が圧迫されて、呼吸が自然にできにくくなってしまうのです。

 椅子に座るときは、浅く腰掛けたほうが背筋はまっすぐになります。また、人間は、立ちっぱなし、座りっぱなしではなく、立ったり座ったりの動作を繰り返しています。

 坐から立へ、立から坐への動作の移行が無駄無く機敏にできると、美しい身のこなしが習得できるといいます。そのコツは、両膝を揃えて、構えをつくってから動くということ。座礼の言葉では「即坐即立」といいます。

 上田宗箇流では「愛されるための所作」として次のように説いています。『凛として美しい所作が自然にできる人は、多くの人から愛されるでしょう。それは、そこにいるだけで、周りに幸せをお裾分けして、心地よい場をつくることができるからです。美しい礼法を身につけた人は、周りを幸せにして、また自分も幸せになることができる』と。礼法や躾ときくと、難しく面倒だと思うかもしれませんが、実はとても簡単なことの積み重ねなのです。日々の生活の小さなことをほんの少しゆっくりと、丁寧に過ごすだけでめざましい変化が起こるのだそうです。美しい所作、美しい身のこなしで心地よい場をつくってみてはいかがでしょうか。(参考図書 日々ごゆだんなきよう 幸せを呼ぶ礼法入門 上田 宗冏 角川書店