F&Aレポート

「減点主義」から「賞賛」の文化へ 「褒める」をルーチンワーク化 → 「足元を照らす」

「減点主義」から「賞賛」の文化へ 「褒める」をルーチンワーク化 → 「足元を照らす」

 キャリアコンサルティングの基本はカウンセリングで、中でも傾聴と問いかけによって相談者の「足元を照らす」ことに主眼をおきます。「足元を照らす」とは、相談者の能力や価値観、体験などを聞き出し意味づけしていくことです。本人は「自分なんか大したことはできない、誇れるような成果もない」と思っていても、「こんなことが得意なのですね」「あんなことも可能になるのでは?」と、本人が気づかない長所や可能性を浮かび上がらせるのです。「足元を照らす」ことは、キャリア指導だけでなく、日頃の良好なコミュニケーションづくりにも有効です。今回は齋藤孝氏「1分で大切なことを伝える技術」を参考にしつつ、褒める技術についてご紹介します。

1.「減点主義」から「賞賛」の文化へ
 日本は、世界でも稀に見る減点主義の国である。それでも国として歴史的に失敗してきたわけではないので、そのすべてが悪いとは言えない。
 かつての日本人は、よかれ悪しかれメンタリティが極めて強かった。支配階級だった武士でさえ、なにかあればすぐに切腹。それも「喜んで死にます」ぐらいのことを平気で言うマインドだった。「死を賜る」という言葉さえあったほどだ。

 その当時と比べれば、今はまるで国が違うといってもいい。だから昔の感覚で減点ばかりしていると、すぐに潰れてしまう。千尋の谷に突き落としたが最後、二度と登ってこない者が増えている。「もっと励ましてもらいたい」「やさしくコーチしてほしい」という思いの方が圧倒的に強いのだ。つまり、今日の日本に必要なのは、従来型の「減点主義」ではない。それとは真逆の「賞賛」の文化だ。

2.褒めづらい人ほど褒める「1日3人を1分ずつ褒める!」
 すでに世の中で成功している人なら、もう褒められ慣れているかもしれないが、圧倒的多数の成功していない人、褒めどころが難しい人ほど、実は「誉めてもらいたい」という欲求は強い。そういう人に対しては、ちょっとした褒め言葉でも効果絶大だ。

 そこで一日に3人ずつ、それぞれ最低でも1分の褒める時間をつくる、と決めてみてはいかがだろう。人の実力を評価、判断するのではない。最初から「この人を褒める」と決めてかかるのだ。若干のお世辞が含まれていても良しとする。

 一日当たり都合3分の「褒め時間」を日課とするわけだ。それを毎日記録できればなお良い。気づけば、多くの人と良好な関係を築いていることになるだろう。

 対象は、やはり褒められ慣れていない人、褒めどころの難しい人が良い。まだ開花していなくても、その人が持つ「芽」や「種」を見つけ出すのがポイントだ。

 人を褒めるには洞察力や直感力が必要だ。誰の目にも明らかな評価や実績に対して客観的な評価を下すのは、褒めることとは違う。

3.褒め方は自己流でOK。「視点を変える」
 一見して「褒めどころのない人」をいかにして褒めるのか。ここで重要なのは「視点を変える」ということだ。たとえば日常生活でも、予定の電車に乗り遅れた、といったことはよくある。そういうときも、考えようによっては「おかげで時間があいた」と捉えることができる。恐らく身の回りで起きる多くの事象は、ポジティブな解釈が可能ではないだろうか。同様に、人の見方も変えてみることだ。実際、人間の短所と長所は表裏一体なことが多い。むしろマイナスをプラスに変えて評価すれば、言われる本人も嬉しいはずだ。自分がマイナスと思っている部分を褒められたほうが、プラスと思う部分を褒められるより、印象に残りポイントも高いだろう。世間から「無責任」「軽い」と批判される人も、裏を返せば「フットワークが軽い」「アイデアが次々出る」と評価できなくもない。「その能力を活かして、新しいものを生み出せ」とアドバイスを送ることもできるだろう。

 そもそも性格的な短所を注意しても人は簡単に修正するのは難しい。短所を克服するよりも長所を伸ばした方が良いのである。