F&Aレポート

あなたは日本語ペラペラですか 2

あなたは日本語ペラペラですか 2 もともとは流行語だけど意味が変化しています!変幻自由の日本語

 幕末から明治にかけて、外国から思想や文化が大量に流入した日本。このとき、西洋の概念に当てはまる言葉が、従来の日本語にはなかった。そこで、造語が量産されたのだ。これが日本語の変化に弾みをつけたと言われる。
「文化」「文明」「情報」「自由」「社会」「存在」「権利」「個人」「経済」「意識」「理性」などは、欧米の言語を翻訳した造語である。漢字に訳すことで、西洋の概念は日本人に受け入れやすい形になった。もしこれらの造語がなければ、これほどスピーディに西洋の学問や技術を取り入れることはできなかったかもしれない。今回は、昔の流行語が変化して今に生きる言葉をご紹介したい。(美しい日本語と正しい敬語が身につく本 日経おとなのOFF参照)

1、「稽古(けいこ)」
<語源・由来>古(いにしえ)について知り、考えること
 → <現在の意味>芸能、武術を習う、練習
■物事を深く考え、精進することが本来の意味
現代では「芸能、武術などを習うこと、練習」といった意味を持つ言葉だが、日本国語大辞典では、『古事を考えて、物事のかつてあった在り方とこれからあるべき姿とを正確に知ること』が、意味の1番目に挙げられている。かつては「古(いにしえ)を稽(かんがえ)る」という意味で使われていた。

2、「派手(はで)」
<語源・由来>華やかな奏法 → <現在の意味>華美で目立ちすぎること
■三味線の奏法を指す褒め言葉だった
本来は、三味線用語でにぎやかな奏法を指す「映え手(はえで)」「破手」が語源。それが歌舞伎や舞台などで華やかで目立つことをいうようになる。しかし、江戸っ子に愛された『粋』という美意識が確率されて以降は、『粋には劣るが華やか』『浮ついた華美』というニュアンスで使われるようになった。

3、「浮世(うきよ)」
<語源・由来>定めなき人生 → <現在の意味>当世の流行、好色、世間
■享楽とは無縁な仏教用語から始まった
本来は、苦しくつらい世の中という意味の仏教語「憂世」。室町時代末期に流行った厭世思想で「儚い(はかない)世だからこそ享楽的に生きよう」というニュアンスが強まり、「浮世」の表記も出現した。江戸期に井原西鶴の「好色一代男」が出版されて以後、「浮世草子」が流行。浮世は好色の意味合いも含むようになった。

4、「一入(ひとしお)」
<語源・由来>染め汁1回浸す → <現在の意味>一段と、という強調語に変化
■生地を染めるたびに色が深まる様子がリアルに伝わる
「一入」とは、本来は布を染めるとき、染め汁に1回浸すことをいった染色用語。それが転じて、程度が一段と増すという意味で使われるようになった。「入」が浸したり、着色したりする回数を表している例として、太平記二三の「眉は漆にて百入(ももしお)塗ったごとくにして」などがある。

5、「際物(きわもの)」
<語源・由来>季節商品 → <現在の意味>一時的にしかはやらないもの
■特定の季節ごとに売り出される品物を指していた
一時的に人々の興味を引く、扇情的な出し物や人物を指す「際物」。もとは正月の羽子板、3月のひな人形、5月のこいのぼりなど、特定の時期にだけ売られる品物のことだった。それを商う商売が「蓮葉商(はすのはあきない)」。蓮葉には「軽い」「軽薄」「軽卒」といった意味があり、一時的にしかはやらないという意味に転じたといわれる。