2013のトップニュース「富士山 世界文化遺産に決定!」今むかしも変わらず富士の山
■ 読者が選ぶ2013年の日本10大ニュース(讀賣新聞)では、「富士山 世界文化遺産に決定」が第2位を占めていました。(ちなみに第1位 2020年東京オリンピック、第3位 参院選で自民公明両党が過半数獲得・ねじれ解消)■2013年6月2日、世界遺産委員会は日本が推薦していた富士山を世界文化遺産に登録することを決めたのです。評価された大きな要因となったのは、「富士山」は古来、日本人の重要な信仰対象であり続けたことに加え、葛飾北斎らの芸術作品の題材になり海外に影響を与えたことなどと言われています。■日本人のそれぞれの心にそびえる富士山。それが、異文化の人達にも認められたというのは、やはり誇らしいニュースです。これからも霊峰として、心の拠り所としてその威風堂々としたたたずまいを崇めたいものです。■紐とけば古文にも富士山を詠んだ歌がたくさんあります。今も昔も変わらない富士山への日本人の思い。2013年を締めくくるレポートは古文の中の富士山をご紹介します。雪、高い、燃えるといった意味に畏敬の念や恋する思いを綴った歌を見ると、今も昔も富士山は日本人の心の聖地なのだという気がしてなりません。
1.田子の浦ゆ うちい出て見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける(山部赤人)
意味:田子の浦まではるばる来てみると、富士山の高いところは雪になっている。今でも雪は降り続いているのだ。
2.富士の嶺(ね)を 高み畏(かしこ)み 天雲も い行きはばかり たなびくものを(高橋虫麻呂)
意味:富士山は高くて畏れ多いので、雲も行く手をはばまれ、たなびいています
3.富士の嶺(ね)に 降り置く雪は 六月(みなづき)の 十五日(もち)に消ぬれば その夜降りけり(高橋虫麻呂)
意味:富士山に降る雪は、六月十五日に消えるのですが、その夜からまた降り始めるのです
4.我妹子(わぎもこ)に 逢ふよしをなみ 駿河なる 富士の高嶺の 燃えつつかあらむ(作者不明)
意味:あの娘に逢う機会がなかなかないので、私の心は富士山のように燃え続けていくのでしょうか
5.妹(いも)が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつわたれ(作者不明)
意味:あなたの名も私の名も、人の噂にたつと惜しいから、富士の高嶺のように燃えて生きていくのです
6.天(あま)の原 富士の柴山この暗(くれ)の 時ゆつりなば 逢はずかもあらむ(作者不明)
意味:富士の柴山のこの夕暮れの時が過ぎたら逢えないかもしれません
7.富士の嶺(ね)の いや遠(とほ)長き 山路(やまじ)をも妹がりとえへば けによばず来ぬ(作者不明)
意味:富士の嶺のとても長い山道でも、君のところへ来ると思えば、息も切らせずにやってきたんだ
8.霞(かすみ)居(い)る 富士の山びに 我が来なば いづち向きてばか 妹(いも)が嘆かむ(作者不明)
意味:霞がかかっている富士山のふもとに私が行ったら、どちらを向いてあの女(ひと)は嘆くのだろう。霞む富士の山辺に来たならどこを向いて愛しい妻は嘆くのだろう
9.さ寝らくは 玉の緒ばかり 恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと(作者不明)
意味:共に過ごした日々は束の間でも恋する胸のうちは富士の鳴沢のように響いている