特集 相手をたてる会話
セールスの用語に「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれるものがあります。たとえば、訪問販売のセールスマンが、相手がドアを開けた瞬間に片足をつっこんでしまう。ドアを開けた方は断りにくくなる、、、というパターンです。
会話でも強引なやり方をする人がいます。会話の主導権を奪い、自分の言葉を延々を続けるような人。相手の言葉も気持ちもまったく意に介さず話す人です。たとえば、、、
A上司「なんで言う通りにしなかった?あれほど言ったじゃないか」
B部下「いや、そうしようとしたんですが、お客様が、、」(最後まで言わないうちに)
A上司「だから、いつも言ってるだろう!(延々続く)」
B部下「ええ、だからそれは、、」(また、最後まで言わないうちに)
A上司「仕事というものは、ルールがあって(さらに延々続く)」
これでは、相手に伝わるものもなく、信頼感も失います。これはマナー違反です。
相手の使った言葉を変換しない
ホテルオークラでは、こんな対応をするように教育しているそうです。
お客様「すみません、お冷やください」
担当者「はい、お冷やでございますね」
お客様「水をもらいたいのですが」
担当者「はい、お水ですね」
これが、なぜ素晴らしいのか、次の対応と比べてみてください。
お客様「お水ください」
担当者「お冷やでございますね」
お客様「ああ、お冷やです」
この対応では、お客様の言葉はいったん否定され、変換されてしまっています。怒る人はいないでしょうが、自分の言葉が打ち消された不快感や、「自分の言い方が悪かったのかも」と、いうような余計な気遣いをさせてしまいかねません。前者の対応ではそのような不快感はなく、自分の言葉と要望が自然に受け入れられたという幸福感が残ります。だからこそ、ホテルオークラは気持ちのいいホテル、一流のホテルと認知されるわけです。相手をたてる会話とは、こんなことから始まるのではないでしょうか。