お辞儀をするときや、姿勢を正すときに手を体の前で重ねるときは、「左手が上」というマナーがあります。
ただ、最近のマナー本では「右手が上」という教えもあります。これは接客業などで、お客様に対して、すぐにサービスができるという考え方からきている作法のようです。
結局、「右でも左でも、どっちでもいいじゃないか!」と、思われるかもしれませんが、古くからの習わしの「左手が上」には理由があります。
刀を抜く手(右手)を抑える=「敵意はありません」
武士の時代は、左の腰に刀を指し右手で刀を抜きます。右手を左手で抑える形は、「敵意はない」という相手を敬う心の表れだったのです。
「手を前で組む」というよりも、「手を重ねる」といったほうがふさわしいでしょう。指先にまで神経を使って左右の指を揃えると、緊張感のある美しい形に収まるはずです。
着物は「左側」が上
男性も女性も、着物は「右前」で着付けます。「右前」とは「右側が先」という意味です。着物は、右側を先に合わせて、その上に左側を重ねます。向き合った相手から見ると、襟元はちょうど「y」の字のように見えます。
また、胸紐、腰紐などの紐は、必ず左が上になるように締めます。そのため、手を前で重ねるときも「左手が上」になるのが、自然であるという考え方があります。
「諸説あるので、どちらが正しいか迷います」という質問を受けることもありますが、その理由を理解した上で、自分が何を信じ、どのようにありたいかで決めれば、そこに相手に対する配慮や敬意も表れるのではないでしょうか。
ちなみに私自身は上記2つの理由もあり「左手が上」派です。右手を上にすると違和感があるので、もう習慣になってしまっているのだと思います。