F&Aレポート

2060年まで、人類が体験する3つの革命

追悼レポート 2003年2月18日号より
特集 2060年まで、人類が体験する3つの革命

昨年の流行語「絆」というキーワードは、日本のみならず世界中で、命や繋がることの尊さを思い起こさせてくれた。このたびの追悼レポート「2003年2月18日号」は、今は亡き織田健嗣の最後の筆跡によるものである。21世紀のあらゆる時代の変化の共通テーマは「いのち」であると説いている。”10年ひと昔”というなら、このレポートはひと昔前、未来を夢見た一人の男の視点である。合掌。

1.2060年国家は無くなる…「技術の時代」から「いのちの時代」へ
 2060年までに人類が体験する3つの革命は、現在進行中の「デジタル革命」。その次に2020年から「バイオ・テクノロジー革命」が起こり2040年まで続く、そのバイオ技術の上に2040年から「地球環境革命」が起こり、それが2060年位 まで続く。それぞれの革命は既存の価値観を変えるだけでなく、その後の人類の行方を大きく左右する。また、この3つの「革命」はある日突然起こるのではなく、それぞれ20~30年位 続き社会システムや価値観を変えていく。この3つの革命がもたらす時流を把握して既存事業や新規事業のレールをひいていけるかどうかが今後の重要課題になってくる。デジタル革命、バイオ・テクノロジー革命、地球環境革命の共通 のテーマは「いのち」である。時代は技術の時代から「いのち」の時代へ移行中である。「いのち」の時代は国家という主権を越えて、地域や都市や組織が結ばれる時代である。そうなると2060年には国家は無くなる。もしくは、その時点で実際には無くならなくても、現在よりはるかに国家機能は無くなっている。

2.「デジタル革命」から「バイオ・テクノロジー革命」へ
 とはいえ、デジタル革命はまだ始まったばかりである。今後20~30年続き、これにより政治の仕組、経済システム、教育システムなどが変わり、コミュニティが変わり、社会システム全体が変化する。そして、この「デジタル革命」は次の革命を準備するのである。「デジタル革命」は、第2の革命、第3の革命にバトンタッチするリレー競技の第一走者なのである。 第2の革命は、「バイオ・テクノロジー革命」である。特に注目されるのがタンパク質の合成研究や技術開発である。これを行うためには大容量 でかつ高速のネットワークに接続された膨大なコンピュータが必要になる。複雑なDNAやタンパク質の構造を解析する道具として、ITは必須で、これがなければバイオ革命には到達できない。また、バイオ革命は、一つの国や有名な大学、あるいは著名な研究者だけで出来るレベルではない。世界中の研究者がネットワーク上に繋がってコラボレーションしてはじめて成り立つのである。そのためにもバイオ・テクノロジー革命はデジタル革命がなされていることが前提となる。

3.「デジタル革命、バイオ・テクノロジー革命」から「地球環境革命」へ
 2040年までは、デジタル革命とバイオ・テクノロジー革命が経済を引っ張っていく。この2つの革命は第3の革命である「地球環境革命」を準備する。すでに地球環境問題は、先進国の政治や経済の重要なものとして大きく取り上げられているが、地球規模での未曾有な危機に関して解決できるレベルではない。現在、多くの企業や組織で環境の取り組みなどが消費者や投資家などにPRされ、実際に地道な努力をされていることは非常に重要であるが、現在の政治や経済の枠組みが変わらない限り環境問題を解決するまでには至らない。社会システムを根本から解決するには、デジタルとバイオの革命を経てはじめて解決できるのである。地球環境革命はデジタル革命とバイオ・テクノロジー革命なしでは不可能な地球変革なのである。

4.「いのち」の時代の夜明け前
 2050年までの3つの革命の本質は「いのち」である。バイオ・テクノロジー革命は難病の解決による長寿の実現、植物や動物の生命を真正面 から捉える技術革命である。これは食料問題の解決、さらに「いのち」の量 (年齢)から質(より充実して生きる)の移行まで幅広い変化をもたらす。そしてこの地球上の全てのいのちの問題である地球環境問題は3つの革命によってはじめて解決される。温暖化、生物種の(絶滅)保存、オゾン層破壊の問題、エネルギー問題、食料問題等々、複雑に絡む地球環境問題は、やがて社会環境の問題まで提示して教育問題、治安問題、経済問題、平和問題というように、より外部環境から内部環境へ、「いのち」の意味へと深化していく。ADSL等により一般家庭に高速常時接続されたネットワーク、いわゆるブロードバンドが普及した。いよいよ全てのものが接続されるユビキタスネットワーク時代を迎える。2003年は、それぞれの人にとって、3つの「エポック」をつき動かす「エポックメーキング」【epoch‐making】な1年になる。デジタルと教育、デジタルと経営、デジタルと政治、デジタルと芸術など、あらゆるものを第一走者であるデジタルに繋げて考えてみよう。この1年で今後の50年間の社会との繋がり方や関係が変わる。2003年はいのちの「夜明け前」である。