ボストーク松山藤原塾

ゴメン!では済まない時代

はじめに

先週後半から暑さが戻ってきました。特に陽射しがある間は気温が高い日が続いています。急に冷え込んだ身体を少し夏に戻す意識が必要なようです。

消費税減税国会が今日から始まりました。食料品1%については、どんなに理屈で反論しても通じないという諦めムードいっぱいです。しかし、8%から1%に減税になるということと、物価が下がるということはまったく別物です。これは以前にも書きましたが、物価は様々な経済要素や経営上の判断で動きます。その物価に対して消費税が機械的に課税されるだけです。私たち税理士は様々なお客様の決算を毎月見ていますが、仕入れ値は上がっているのに売上価格に転嫁できないという状況が現実に起きています。そんな企業の経営者の悩みを毎月伺っています。

そのような実態であるにもかかわらず、「消費税が下がったのだから物価は下がる」と言ってしまうことがあれば、それは政治のミスリードです。物価が上がらないデフレ時代はもう終わってしまい、今はインフレの時代です。

便乗値上げはダメだとしても、便乗とはなんでしょうか?仕入れ値が上がっているのに売値に転嫁できないとすれば、それはまともな経営ではありません。仮に値下げしない事業者がいたら、ただその一面だけを見てSNSを使って攻撃するような同調圧力が起きることのないよう強く祈ります。

先週の土曜日は事務所の蛍光灯をLEDに交換する工事があり、週末なのに早起きして朝から立ち会いました。今回の交換は、「水俣条約締約国会議の決定を受け、水銀使用製品である蛍光灯は2026年1月より順次、製造と輸出入が規制される(経産省のHPより)」ことによるものです。今の蛍光灯がすぐに使えなくなるわけではないのですが、新しい蛍光灯を購入することができなくなる、つまり使えなくなるということですね。

今のもので十分なのになぜ交換するのかと言えば、「水俣病」つまり水銀のことを念頭に置いたものです。これは国として支援すべき事業ですから、補助金も用意されています。その背景が水俣病ということは初めて知りました。

問題はこの補助金です。補助金が出るからこの仕事をする、という話を時々聞きます。やりたいことがあって補助金が出るから利用するのではなく、先に補助金なのです。そんな人がいても仕方ないよね、それは思います。しかし、この傾向が強く出ると、事業そのものよりもまず行政にすり寄ることが中心になってしまうのではないかと思います。

今週の愛媛

海外と比べると日本の道は狭いですが、特に愛媛県の道の狭さは日本一だそうです。愛媛新聞の報道によると、建物を建築するための基準である建築基準法は、建築のためには土地が接する道路について、幅員4メートル以上の道路について2メートル以上接することが求められます。相続税で土地の評価をする際にも、道路の中央から測って2メートルの幅がなければその部分は後退することが求められることを前提にその部分を評価減します。

総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、愛媛県はこの条件を満たしてない住宅が全国でももっとも多く、都市計画区域内にある愛媛の住宅の53.8%が狭あい道路に接していたそうです。これは全国平均の30.2%を大きく上回っています。県内市町を見ると、松山市53.6%、内子町73.6%、八幡浜市69.3%となっています。たまに八幡浜に帰ると、小さい頃はこんな小さい道で遊んでいたんだなあと思うことがありますが、全国的に見ても狭かったのです。

八幡浜市の道が狭いのは空襲がなかったということでもあります。名古屋の道が広くなったのは空襲の結果だと言われます。東京の道が広いのは、関東大震災、空襲そして1964年開催のオリンピックです。今の少子高齢化を前向きに捉えるとすれば、この機会の土地の集約を行い、道を拡げるという政策があっても良いと思います。財源が問題にはなると思いますが、それ以上に必要なのは、政治の決断ではないでしょうか。

今週考えたこと

少し前に、今の政治は自分たちの支持者のことしか見ていないと書きましたが、本当にそうだったようです。その背景がどうなのかはわかりません。ただ、特定の政治家を支持した自治体とそうでない自治体に対して配賦される予算が明らかに違うという事実だけは判明してしまいました。予算は年度に応じて見直されるので、大きな事業が終了したり始まったりすれば増減することはありうる話だと思います。しかし、官僚が政治家に忖度して数字を調整することがまったくないと言えるのでしょうか。官僚は慣れているので、仮に「何か」あったとしても、裏付けになる資料は残していないと思われますが、結果だけ見るとそうなのかなあと思ってしまいます。エビデンス重視と言われる時代、予算修正となったエビデンスが求められます。

この問題について少し考えてみました。日本国憲法15条2項には下記のように書かれています。「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」

ここで言う「公務員」には、国家公務員や地方公務員だけでなく、国会議員、地方議会議員が含まれます。つまり、ある政党の政治家であっても、その支持者だけでなく国民全体のことを考えなければならないという当たり前のことが憲法には書かれています。では、今回の件はこの憲法に違反するのか?政治家も行政担当者も、特定の地域だけ予算を削減したと認めればそうなると思いますが、その可能性はほぼないでしょう。仮に誰かが訴えたとしても、「少し言い過ぎただけで、そんな事実はない」「予算配分はある事業が終了したため一時的に減額したもので、何らかの意図で行ったものではない」と説明されると、それを覆すことは困難です。過去の裁判でも、日本の司法は行政の裁量権を重視して、深く突っ込まず、行政の判断をひっくり返すことはほとんどありません。この点は米国の裁判所の方がトランプ関税をひっくり返すなどダイナミックです。

このような問題のために必要なのは、情報の開示と国民の意識だと思います。情報の開示とは、行政側から開示するだけでなく、メディアも時間をかけて情報を集め、問題点を指摘することも含まれます。国民の側も、すべてを体制に任せるのではなく、問題意識を持ち続けることだと思います。時間が経つと、国民の意識としても忘れてしまったり、もういいやと思いがちです。

SNSのようなソーシャルメディアはどんどん流れていくので、少し前の情報は忘れ去られる傾向があります。新聞やテレビのようなメディアを中心に、粘り強くこのような問題に対処していく必要があります。また、例えば税理士のような専門家は、一般の方よりも税制や財政に深くコミットしているわけですから、政治的に偏ることなく、客観的にそして長期的に、問題をチェックしていく姿勢が必要だと思います。

この問題を考えながら、久しぶりに憲法の教科書を読みましたが、憲法15条2項に関する説明はほとんどありませんでした。これでも一応法学部出身なので、憲法の単位は取りましたが、ここまで深掘りして考えたことはありませんでした。ん10年前に戻れば、もうちょっと勉強したのになと思います。

今週のAI

AIが上司だったらどうなるか?部下からすると、上司の機嫌を伺いながら報告することがない、報告終わったら「飲みに行くか?」なんて誘われることもない。上司からすると、部下の様子を細かく気にしながら話を聞かなくてよい、言葉遣いに注意することもない。ということで、大きな問題でなければ、AIを介して報告や相談のやり取りがあるのはよいことかもしれません。

もっとも上司と部下の交流がまったく必要ないというわけではないでしょう。緊急時、大きなトラブル発生時のような場合は、AIを通さず、直接やり取りすべきタイミングがあるはずです。このようなAIの使い方もあるなあと思わせる記事です。

先週、サイバー攻撃が多く報告されている背景があるのではないかという話をしましたが、どうもそれが現実のようです。最近特に国税庁名での迷惑メールが届きます。それもすごい数です。明らかに国税庁からのメールでないことは分かるのですが、私のところには国税庁からの通常のメールがたくさん来るので、迷惑メールのフィルターも十分に機能しないようです。AIが暴走するリスクというのは、ターミネーターのように殺人を犯すみたいなことだけでなく、セキュリティの問題でも出てきます。恐らく、セキュリティ対策ソフトもこれからAI対応してくるのだと思いますが、それまではアナログでできる限りの防御をしていく必要がありそうです。

おわりに

シルバーウィークの前に国税庁のe-Taxと総務省のeLTAXのシステムが大幅に刷新することになり、トラブルが起きないか不安だと書きました。ネットバンキングの納税ができないという混乱もありましたが、10月2日に、e-Taxの不具合により、203人分の個人情報が閲覧された可能性があると発表されました。記事によると、広報広聴室長がお詫びするとともに再発防止の徹底に万全を期すとコメントしたとされています。

セキュリティに関するこの国税庁の対応はダメですね。情報漏洩の問題は多くの企業で発表されています。今の時代、どんなに対策を取っていたとしても、セキュリティに関する問題が起きてしまうのは避けられません。起きてしまったことは良しではありませんが、起きてしまったときにどのような対応をするかということが、企業や官公庁には重要な問題とされています。それは担当者がコメントするだけではなく、記者会見などを通じて問題が起きた具体的な背景、実際の被害の状況、今後の改善点などを丁寧に説明すべきです。この件は、国税庁からの発表が報道されただけで、HPにもいまだに掲載されていませんし、その原因などはほとんど分かりません。

国税庁は一方で納税者が税務署窓口に来なくて済むように、また税務行政の効率化を目的として、電子申告を推進しています。せっかく電子申告を利用して送信したデータが筒抜けというのは根本的に大問題と捉えるべきでしょう。今からでも、しっかり説明しないと、納税者の信頼を得られません。10年前なら担当者からのコメントという対応で問題にならなかったかもしれませんが、今はそのような時代ではありません。マイナンバーが始まったときに国税庁もしっかり勉強したはずなのですが(私も税理士会の担当者として一緒に協議しました)、やっぱり役所だなあと言われないように、納税者の信頼を得て安心して電子申告ができるように、もう少し考えてほしいところです。


この記事では一般的な経済市場動向についての情報提供を行っているもので、特定の投資を推奨又は勧誘するものではありません。