茶道の稽古をするときに、器を置いてパッと手を離すのは、よろしくないと言われます。たとえ、道具を大切に扱うという所作は、器を置いたあとに(時間にすれば0.5秒か一秒かのわずかな時間ですが)とどまり、そっと手を離します。
武道でいうところの「残心」です。「残心」は、技を終えたあとも、心身ともに気を抜かず、相手や周囲への意識を保ち続ける姿勢のことをいいます。これは、日常のコミュニケーションにも通じるものがあります。
たとえば、「聞く」とき。話を聞いて、すぐに自分の話に切り替えるのではなく、「大変でしたね」と共感したり、「その後は?」「具体的には?」と促したり、展開させたりすることは、相手の言葉の余韻を受け止めていることになります。
「伝える」ときも同様です。上司から部下への指示を送る際も、用件だけ言って、「あとはよろしく」で終わるのではなく、「困っていないか」「質問しづらいのでないか」と、表情や反応を観察する。必要であれば声をかけるなど配慮するなどです。
- 会話の最後に、相手の表情を一度見る
- 面談後、相手の話で気になったことを一つ覚えておく
- 別れ際は、最後まで目を向ける
その場が終わった後のほんの数秒、相手への意識を残す。それは、コミュニケーションの質を変えます。
仕事は効率が重視されますが、人と人との関係は、効率だけでは測れないものがあります。「大切にされた」「自分に寄り添ってくれた」という実感が、「信頼」につながります。ひいては、心理的安全性が担保された職場になり、誰もが不安なく能力を発揮できる環境へとつながります。「残心」は心がけです。見直してみたい今日この頃です。
