今回は、わかっているようで間違えやすい微妙な言葉の間違いについてご紹介します。(「微妙におかしな日本語 神永暁著)
「肝に銘じるor肝に命じる」。そもそも「肝」ってなに?
「肝」とは「肝臓」の「肝」。古くは魂が宿るところという意味で「心」のことを言いました。心に刻み込むようにして忘れない、しっかり覚えておくという意味で「肝に銘じる」と、言います。「銘じる」も「命じる」も、音にすれば同じ「めいじる」なのですが、意味は違います。
「銘じる」=心に深く記憶する
「命じる」=心に命令する
意味を知れば、どちらを使うべきかは明白です。「肝に銘じる」が正しい表記で、「肝に命じる」は誤用ということになります。
「噛んで含めるようにor噛んで含むように」
よく理解できるように細かく丁寧に言い聞かせることを「噛んで含める」と、言います。ところがこれを「噛んで含む」という人が50%近くいるといいます。
「噛んで含める」は、食物が消化しやすいように噛んで口の中に入れてやるということがもとの意味です。そこから転じて、あたかもそうするかのごとく丁寧に教えるという意味になりました。
「含める」と「含む」のちがいですが、「含める」は「言い聞かせて理解させる」という意味あるのに対し、「含む」にはその意味はありません。
「噛んで含める」が本来も使い方です。
「顔色をうかがうor顔をうかがう」
相手の顔の様子でその人の心の動きを察するという意味で、「顔色をうかがう」と、言います。「親の顔色をうかがって判断する」などと使います。
「顔色」とは、内心・感情が表れた表情や顔の様子のこと。「顔」にも「顔色」の意味はありますが、相手の顔の様子で心の動きを感じ取るという意味の場合は、やはり「顔色をうかがう」の方が適しています。
「体を壊すor体調を崩すor体調を壊す」
病気になったり体の具合が悪くなったりしたときに「体を壊す」「体調を崩す」と、言います。「体を壊してしばらく休職する」「残業が続いたので体調を崩した」などと使います。「体を壊す」の「壊す」は、もとの機能をダメにするという意味なので、「体」に続くのが自然。「体調を崩す」の「崩す」は安定した状態を乱したり、悪くしたりする意味なので、「体調」に続くのが自然です。従って、「体を壊す」「体調を崩す」の慣用表現には違和感がありません。
ではその混同で生じた「体調を壊す」は、どうでしょうか?
先に述べたように「壊す」は、もとの機能をダメにするという意味なので、「体調」という状態を表すことばと結びつけると、不自然に感じられます。
ところが、「体調を壊す」を使う人は結構いるようです。
では、「体を崩す」はどうなのか?「体勢を崩す」ならわかりますが、これだと「体調を崩す」とは、意味が変わってきます。
結論として、「体を壊す」「体調を崩す」が本来の言い方で、「体調を壊す」は意味から考えても不自然なので、使用しないほうがいいといえるでしょう。
「あごを出すorあごが出る」
疲れ切ったときの状態を「あごを出す」と、言います。「登り坂が続いてあごを出す」のように使います。ですが、これを「あごが出る」と使う人がいます。「あごを出す」=意図しているかどうかは別として、あくまでも自分の行為として、あごを出すということを表した表現。「あごが出る」=自分の意思とは無関係に、勝手にあごが出てしまうという表現。たとえば、長時間歩いて疲れると、自分の行為としてあごが出る格好になるので、「あごを出す」が自然な表現になります。
