F&Aレポート

「補聴器」と「カクテルパーティ効果」

 米アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 2(エアポッズプロ2)」が発売され、日本でも医療機器として認可が下りたというニュースがありました。

 こちらは軽度から中等度の難聴に対応した補聴器となるそうです。一般的に補聴器は、高価(30万円ぐらい)ですが、アップルのイヤホンは3万円程度と割安です。

 iPhone(アイフォン)と連動させて聴力検査をするなど、シニアが利用するには、操作性の難しさという課題がありますが、今後の開発に期待大ではないでしょうか。

 ところで、「カクテルパーティ効果」とは、多くの音の中から、自分が必要としている情報や、重要な情報を無意識に選択できる脳の働きのことをいいます。

 1953年イギリスの認知心理学者のコリン・チェリーによって提唱されました。私たちの脳は、自分に必要な情報を都合よく整理して認識しているのです。

 たとえば、パーティのように騒がしい中でも、自分の名前を呼ばれたら聞こえる。電車に乗って眠っていても、自分が降りる駅では目が覚める。雑踏の中でも自分が興味のある話題は、聞き取ることができるなど……。

 脳は、与えられた情報をすべて取り込んで、同時に理解しようとしても、処理が追いつかずパンクしてしまうため、それを回避するために必要な情報のみを得て、シャットダウンしているのだそうです。ただ、情報がどのように処理されているのか、その詳しいメカニズムは現代でも解明されていません。

「カクテルパーティ効果」を活用して、「相手の名前を何度も呼ぶ」や、「新社会人限定」などターゲットを絞った表現をすることで、「自分に関係がある情報」と認識し、より効果的に伝わるというやり方もあります。また、「育児」「家族」「働き方」など、相手の興味のありそうなワードを多く盛り込むことも効果的です。「必要な情報だ!」と、認識してもらうことは、補聴器と同じぐらい大事な働きになるのかもしれません。