部長クラスにマナー講座をすると、必ず嫌な顔をされます。
「いまさら、マナーをやって何になるんですか?」
「マナーは若手に勉強させればいい。こっちは忙しいんだから」
「マナーは、非生産的なものでしょう。AIの時代ですよ」
いずれももっともらしい理由です。
その通りです。実行していただきたいのは、形骸的なマナーではありません。部長に求められるのは、人材価値を活かす「環境設計」としてのマナーです。そもそも、部長(上司・先輩)がやらないマナーを、部下はやるでしょうか?そうです。部長の態度は「職場での標準仕様」になるのです。
「人的資本経営」の前提をつくるマナー
説明するまでもないことですが、「人的資本経営」とは以下の通りです。
「人材を単なる『コスト』『労働力』『管理の対象』と見るのではなく、『中長期的な企業価値向上のための資本』と捉え、その価値を最大限に引き出すために戦略的に投資し、企業価値向上を目指す経営手法です。
具体的には、従業員の知識・スキル・経験・意欲(エンゲージメント)などを可視化・最大化することで、イノベーション創出や事業成長を促し、投資家などのステークホルダーへの情報開示も重視されます」
マナーは、「礼儀作法」ではありません。マナーは、人材価値を活かす「環境設計」です。なぜなら、人は「能力」よりも「発揮できる環境」で、成果に差が出るからです。
環境を極める3要素
職場の環境は「上司の言葉」「会議の空気」「日常の関わり方」で、決まります。
部長のマナーの役割は「心理的安全性」のある組織風土を醸成することです。同時に、「挑戦」「発言」「定着」を促します。
部下の「言える化」、上司の「聴ける化」が定着していますか?
人的資本経営は制度ではなく、管理職の日常動作から始まります。
経営リスクとなりうる「組織の信用低下」
令和の時代、マナーは「個人の品格」ではなく、「組織の信用資産」になります。例えば、以下のようなケースはどうでしょうか。
- メール文の配慮不足(取引先に対して)
→取引先の信頼低下につながるだけでなく、上司が送るメール文は一種の「ひな形」に なり得ます。早晩部下にも伝播します。そのつもりはなくとも見下した表現や、言い回しは、「自社の文化」として外部の人は見定めることでしょう。 - 無意識の言動(部下に対して)
→ハラスメント認定、訴訟のリスク、離職、SNSへの書き込み。本来なら価値を生み出すはずの人材を失うだけでなく、風評被害はもとより、未来のリクルートにも影響しかねません。 - 形式を軽んじる振る舞い
→若手の規範意識の低下、内部統制、コンプライアンスへの影響も考えられます。
「自分のため」ではなく、「組織文化を設計する仕事」へとシフト
「あなたがやらないマナーを、部下はやると思いますか?」
マナーは「知っているか、知らないか」ではなく、「できているか、できていないか」を問いましょう。部長の態度は「職場の標準仕様」になります。口で言うよりも、背中で示すことが最大の教育といえます。
昔は問題にならなかった言動でも、今は炎上、離職、通報につながる言動もあります。時代感覚を磨いて、「昔の常識」と「今の評価軸」は、異なることを認識したいものです。
マナー=「信頼を再生産する仕組み」と捉え、日々の言動を見直すことは、コスト0円からできる「人的資本投資」になります。
