2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、江戸時代の遊郭、吉原が舞台のひとつになっています。11月に入りドラマも大詰めを迎え、吉原の様子が描かれるシーンは見られなくなりましたが、ドラマの序盤から中盤にかけて、当時の遊郭の悲喜こもごもが偲ばれました。
江戸時代の吉原は、政府の役人、文化人、武士、商人、町人など、それなりの立場や財力のある人たちの交流の場でした。華やかな宴席の裏には、厳しいルールとマナーがあり、客をもてなす心と教養と文化を育んだ地でもありました。
「遊郭で生まれた言葉」は、およそ400年の時を経て、今もなお生きています。今回は、遊郭を語源にもつ言葉をご紹介します。
馴染み(なじみ)
今は、「いつものお客さん」「親しい相手」という意味ですが、元々は遊女や芸者が、ひいきの客を指して使った言葉です。→「あの店とはもう馴染みだよ」と言えば、江戸の粋な関係性を感じます。
粋(いき)
遊里の文化から生まれた美意識。「控えめで洗練された色気」「あっさりとした心遣い」を意味します。遊女が持つ『しとやかさ』と『潔さ』を理想とした江戸の言葉。→現代では、洗練された、上品な趣をいいます。(対義語は「野暮(やぼ)」)
間夫(まぶ)
遊女が本気で好いた男性。現代の「まぶだち(親友)」は、ここから転じたと言われています。→『心の距離が近い仲』を指すようになりました。
玄人(くろうと)、素人(しろうと)
もともとは、遊郭や芸の世界で使われた区別。
「玄人」=芸や技を生業とする人
「素人」=一般の客
→現在では、どの業界でも「プロ/アマ」を区別する言葉として使われています。
おひらきにする
遊郭での宴会の終わりを「お開き」と言ったのが始まりです。現在も「このあたりでお開きにしましょう」と、使われています。→『終わり』をやわらかく包み、品良く締める表現になります。
上がる、下がる
遊郭で、お客が「上がる(遊郭に入る)」、遊女が「下がる(部屋を引く)」という表現をしていました。→現代でも「お座敷に上がる」「お食事に上がる」などの丁寧表現として残っています。
気の利く
遊女や芸者が客の機微を察して立ち振る舞うことを「気が利く」と言いました。→今も「気が利く人ですね」と言えば、江戸のもてなしの心を継ぐ褒め言葉です。
お心づくし
遊女や芸者が、お客のおもてなしを評して使った言葉。「おもてなし」よりも丁寧で、相手の気持ちを感じ取る言葉です。→「お心づくしの品々、ありがとうございます」「お心づくしの席に感謝いたします」
