F&Aレポート

2023年度新入社員のタイプ 「可能性は∞(無限大)AIチャットボットタイプ」

2023年度新入社員のタイプ 「可能性は∞(無限大)AIチャットボットタイプ」

 長年、新入社員研修に携わっていますが、ここしばらくの傾向として顕著なのは「休憩時間が静かなこと」です。30名~40名程度集まっている会場で、場合によってはアイランド形式(スクール形式ではなく、グループ形式で机を並べること)で座っているにも関わらず、休憩中は研修時間と同じぐらいシーンとしています。

 それは、コロナ禍でのマスク生活や、無駄なおしゃべりが禁じられる以前から見られる傾向ですが、休憩中はほとんどの人がスマホを見ているのです。目の前の人とのリアルなコミュニケーションよりも、デジタルコミュニケーションが優先されています。

 最近は、そんな光景にも驚かなくなりましたが、「せっかくの機会なのだから、同期でリアルな情報交換をしてほしい」という人事担当者には、「スマホは研修終了まで取り出さない」などのルールを設けてはどうかと提案することもあります。

 さて、そんな新入社員ですが、人事労務の情報機関である産労総合研究所から「2023年度新入社員のタイプ」が発表されましたのでご紹介します。今後のリクルートや育成のヒントになれば幸いです。

<新入社員のタイプ>「可能性は∞(無限大)AIチャットボットタイプ」

 新型コロナウイルス感染症の猛威の中、大学生活のほとんどをオンラインのカリキュラムで過ごした今年の新入社員。インターンシップや就職活動もオンラインでの選考がごく自然に盛り込まれ、むしろ対面での機会を増やそうという流れの中で入社を迎えた彼らは、対面でのコミュニケーション不足から、こちらに特別意図のない発言やしぐさでも、ストレスに感じてしまうことがある。一方で、知らないことがあればその場でごく自然に検索を始めるデジタルネイティブ世代である彼らは、さまざまなツールを扱い答えを導き出すことにかけては、すでに高いスキルをもっている。先輩社員は、彼らの未熟な面や不安をこれまで以上に汲み取りながらコミュニケーションをとってほしい。AIチャットボットが適切なデータを取得することで進化していくように、彼らは適切なアドバイスを受けることで、想定を超える成果を発揮する可能性に満ちている。

<入社後の対応>

 入社後は「イメージしていた仕事や社風、社会人像とは違った」というギャップに加え、対面での、特に目上や距離の遠い相手とのコミュニケーションの経験不足から「先輩のあたりがキツイ」と感じてしまうことが、例年に増して多くなる可能性がある。コミュニティにおける立ち位置の認識や発言の受け止め方に、双方ともにギャップがあることを自覚し、受け入れ側が意識的に導いていかないと組織やビジネス社会にうまくなじめないかもしれない。そのため、先輩社員たちは、これまで以上に経験不足、情報不足の部分を汲み取った接し方に注力してほしい。

 一方で予想だにしない発想やスキルを保持している可能性も十分にある世代と言えるだろう。彼らの可能性を広げるためにも、受け入れ側が意図を明確にし、何を求めているかを彼らに伝えることが大切だ。

「これぐらいはできるだろう、わかるだろう」と思考停止せず、一人ひとりの可能性を見極めて、モチベーションを上げる教育、配属、赴任地を提供できれば、的確なデータを入力することで成果を発揮する「AIチャットボット」のように、受け入れ側が予想しなかったような成果を発揮するだろう。

 ちなみに、2022年度の新入社員のタイプは「新感覚の二刀流タイプ」。2021年度「仲間が恋しいソロキャンプタイプ」、2020年度「結果が出せる?厚底シューズタイプ」、2019年度「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」となっています。

 それぞれの新入社員が現在どのような成長を遂げているかを参考にしながら、育成のヒントを探るという方法もあるかもしれません。

 いずれにしても「人材育成」は、どの企業にとっても最大の課題のひとつです。「人育ては、自分育て」の主体性と覚悟をもって取り組みたいものです。