ボストーク

湊町レター Letter From Minato-machi 2025(令和7)年3月1日 No.164

 今年の冬は気温の低い日が続きました。東北だけでなく、南予地方も大変な雪だったようですが、3月に入り、やっと春を感じる日が多くなってきました。日本では、春は始まりという感覚です。これからどのような年になっていくのでしょうか。

 2月28日、四国中央市の丸住製紙が⺠事再生法の適用を裁判所に申請しました。新聞用紙業界4位、2008年11月期には売上高743億円と県内では大手企業の1社です。

 報道によると、ここに到った原因はデジタル化の進展で新聞や雑誌などの紙媒体が減少したことによる売上げ不振と、パルプなどの材料費の高騰というコスト増とされています。売上が減り、仕入や経費が増える、その結果、赤字が積み重なり、資金が足りなくなった。何か起きたのではなく淡々と業績が悪化していったということが想像できます。

 決算が11月ということは、12〜1月にかけて決算作業が行われ、4月から始まる来年度の受注見込みを見ながら、経営陣が現状の体制として存続は困難と判断したということでしょう。直近の売上高458億円に対して負債580億円を見ると、過去の業績を元に借入れをして赤字を補填してきたが、業績回復できないまま、もう無理!という状態になったと想像されます。

 今回のケースは、⺠事再生法の申請なので、会社を存続しながら債務圧縮を行って再建を目指すことになります。この後、債権者との協議で債権免除や弁済猶予などの交渉が行われ、それが順調に進めば、事業規模を縮小するなどしつつ、会社が存続する可能性は大いにあります。清算を前提とする破産手続が取られなかったのは、この会社にブランド、優良な得意先などがあり、再生の余地があると現段階では判断されたと言えます。

 町内会での紙ゴミの回収場所を見るとかつて積み上がっていた新聞紙の束はほとんどなく、段ボールなどが少し置かれている程度です。デジタル化の進展により新聞などのニュースはスマホで読むのが普通になり、従来の紙の読者層も高齢化により激減した結果でしょう。破綻の背景が町内のゴミ回収で分かってしまいます。

 デジタル化の進展、少子高齢化による市場の縮小、コストの上昇、これは国内におけるほとんどの中小企業が直面している現実です。それらは、現状維持を困難にさせるものです。経営者としては、その実体を理解し、自らの会社の将来性・リスクを検証し、前に進むか、後退するか、別の道を探すか、ということを考えていかなければなりません。当面の事業継続に大きな支障はないとしても、「いつか」のことを考えておくことはとても大切です。