F&Aレポート

一生楽しく働く教え〜 「大きく成長するための小さな習慣」 101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんに学ぶ

  • キャリア・コンサルタントとして、学生や新入社員によくお話しすることがあります。それは、「『楽しく働きたい』と思うなら、仕事を早く覚えること。自分の仕事を好きになること」ということです。
  • 学生時代に得意(好き)だった教科は、他の教科よりも、たくさん勉強したはずです。たくさん勉強するから良い点数がとれる。良い点数だと嬉しい。ますます頑張れる。好きになる。という構図ではなかったでしょうか。
  • 「仕事を覚える」とは、知識やスキルだけでなく、そこに関わる人たちのことも覚えるということです。名前と顔を早く覚えて、その人の仕事のやり方や癖も覚える。初めは「自分に向いていない」と感じても、一生懸命やっているうちに面白くなることはよくあることです。
  • 「ギネス世界記録」の101歳、現役化粧品販売員であるトモコさんは、戦前、戦中、戦後と時代が大きく変化する中で、結婚、子育てをしながら仕事をされました。楽しく生きる秘訣も満載。吸い込まれるように読んだ一冊から、印象的な一節をご紹介します。(101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え 堀野智子著 ダイヤモンド社

トモコさんについて

 私は1923年(大正13年)4月9日生まれですが、2023年に100歳を迎え、その年の8月に「最高齢の女性ビューティーアドバイザー」として、ギネス世界記録に認定されたのです。縁あって、ポーラ化粧品本舗(現・ポーラ)の化粧品販売員として働きはじめて61年になります。そもそも「100歳まで働こう」などと目標に掲げたことはありません。

 楽しく続けていたら、いつの間にかこの年齢になっちゃった……そんな感覚なのです。これまでの人生、早くに母親を亡くしたり、夫を見送ったりと、悲しいことは人並みに経験してきましたが、悲しくても自分がしっかり生きていくことが、亡き人への何よりの供養になるという思いがありました。

人の内面は必ず外側に出るから、キリッと凛々しく身を整える

 女学校を卒業して、私は就職する道を選びました。その頃はまだ、お勤めに出る女性は多くありませんでした。当時、女性は大人になったら結婚して子どもを産み、舅・姑に仕え、夫を支えるものというのが常識だった時代です。

 私が就職を選んだのは「ウーマンリブ」の思想を持っていたからではありません。ひたすら「宝塚歌劇団」に憧れていたからなのです

 なぜ、宝塚と就職が結びつくのか、種明かしをすると「勤務先に袴姿で通えたから」です。私は昔も今も、女性が颯爽としている姿に憧れがあります。

 人の内面は、必ず外側に出るものだと思います。顔かたちの美しさは持って生まれたものなので、追いつくのは難しいけれども、キリッとした佇まいや身のこなしの美しさなどは、誰でも真似することができます。

 私の最初の就職先は、現在のNTTで、当時の「逓信省」でした。

「自分がどう思われているか」よりも「自分はどうありたいか」

 他人がどう思うかは、他人の決めることだから気にしても仕方ない。私は、まっとうなことをやるだけ考えて、あとは「どう思われようが人任せ」でいた方がいいと思います。

 まずは「自分がどう思われているか」と、考えることから「自分はどうありたいか」に、軸足を少しずつ移してみるのはどうでしょうか。

 人にはそれぞれ好き嫌いがあるので、万人に愛されることは不可能です。それに人は、いったん「この人は、こういう人」と思うと、めったなことでは評価を変えません。さらに、ここが重要なのですが、他人があなたを幸せにしてくれるわけでもありません。

 つまり「「人からこう見られたい自分」に近づくことよりも、「こうありたい自分」になる努力をした方が、ずっと幸せに生きられると思います。

その日にやれることをやって「今日も無事に過ぎたな」と思えれば十分

 結婚するまでは、仕事(早番、遅番、夜勤あり)と内職と家事、それに妹の世話で、毎日が飛ぶように過ぎていきました。私は基本的に先のことを悩まず、過去を振り返ることもまずないのです。その日一日、自分がやれることをやって、「ああ、今日も無事に過ぎたな」と思えればそれで十分だと思います。