F&Aレポート

「験を担ぐ(げんをかつぐ)」〜言霊の幸わう国(ことだまのさきわうくに)

 たとえば、結婚式で「切る」「別れる」「終わる」などの言葉は、「忌み言葉」と言われ、避けたい言葉として知られています。葬儀では、「迷う」「追って」「続いて」「重ね重ね」「浮かばれない」など、同様に忌み言葉です。

 考えてみれば面白いと思いませんか?

 普段に使う言葉として悪い言葉ではないのに、特異なシーンにおいてのみ「縁起が悪い」といって、忌み嫌われる言葉になるのです。これが「言霊信仰」と言われるものなのでしょう。

 言葉そのものに「霊魂」が宿り不思議な力を持つ。口から出た言葉が「そのままの現実を引き寄せる」と信じる。ある意味、言葉そのものに畏敬の念を抱く信仰は、デジタル時代といわれる現代でも無視できないものがあります。

「するめ」は「する」が、縁起が悪いので「あたりめ」。「すずり箱」は「あった箱」、「スリッパ」は「アタリッパ」というのは、落語ネタですけども…。

「寄席文字」ってわかりますか?芸人の名前が書かれた看板に使われる文字で、相撲の字に似ています。これも白い部分があってはいけない、隙間があってはいけない、即ちお客さんの入りが悪いことを避けるために、太字で隙間が少なくなるように書かれているのだそうです。しっかりと「験(ゲン)」を担いでいます。

 あらためて調べてみると、「験(ゲン)を担ぐ」とは、ある物事に対して良い前兆や悪い前兆を気にして、または縁起を気にして物事の成功を願う行動をとることを意味するのだそうです。

 「験」の字は、江戸時代に逆さ言葉が流行したことに由来していて、「えんぎ」→「ぎえん」→「げん」と変化したと言われています。また、「験」は仏道の祈祷の効果という意味があるため、仏教に由来しているとも言われます。

 2025年あなたの「験担ぎ」は何でしょうか?今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。