F&Aレポート

猛暑サバイバル!パリ五輪の暑さ対策の鍵は「東京方式」

 先日、パリオリンピックが開会されました。日本では関心が薄く、経済効果を生み出すほどではないと言われていますが、それでも連日、日本選手たちの活躍ぶりは(「まさかの、、、」というニュースも含めて)、テレビでもネット上でも広く報道されています。

 今回、メダル獲得と同時に注目したいのは現地の「猛暑対策」ですが、2021年東京オリンピックの暑さ対策が鍵になるといわれています。(参考 ナショナルジオグラフィック

東京オリンピックの暑さ対策とは

 オリンピックの開催国が暑さと湿気との戦いを迫られるのは、今回が初めてではない。暑さ対策の基礎が敷かれたのは、オリンピック史上、最高気温の記録を塗り替えた2021年の東京オリンピックでのことだった。

 それまで、日本のスポーツ大会で暑さ対策マニュアルが作られたことはなかったと話すのは、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授で東京オリンピック組織委員会のアドバイザーを務めた細川由梨氏だ。

 細川氏のチームは、オリンピックのために日本で初めて暑熱に特化した緊急救護のガイドラインを導入した。特に野外での耐久競技に注意を払い、熱疲労を起こした選手のためのアイスバス(氷風呂)や、深部体温を測定するステーションなどを設置した。最も危険度が高い長距離マラソンと競歩は、気温が30℃まで上昇するなか行われた。

 細川氏は「すべての症状はその場で処置を施し、東京オリンピックでの対策は成功でした」と言い、チームが作成したガイドラインのおかげで、入院したり後遺症が出たりした選手は一人もいなかったという。

 現在、同じ対策がパリでも採用され、医療ボランティアがトレーニングを受けている。

暑熱順化トレーニング

 暑さを克服するため、アスリートたちはしばしば、本番の数週間前から「暑熱順化トレーニング」を始める。これは、室温の高い室内で運動したり、厚着をしたり、サウナに入ったりして、暑さに体を慣れさせるトレーニングだ。

 女子サッカーの米国代表チームは、専門家の指導と協力を得て、2021年東京オリンピックのために暑い室内で調整訓練を行なった。

 専門家は「正しく行えば、暑熱順化トレーニングにデメリットはない」と言うが、トレーニングよる恩恵と、それにかかる必要経費は、オリンピック選手の間の不平等という問題を浮き彫りにしている。

 一部の選手は、設備が整った環境と優秀なコーチの下で練習に励むことができる。しかし、飛行機で暑い地域へ移動して訓練したり、最新の機械で健康状態を監視したり、持ち運び可能なエアコンを購入したりする資金力のない国の選手は、思うような結果が出せないかもしれない。

 エアコンに関しては、ウガンダオリンピック委員会のドナルド・ルケール会長がワシントンポスト紙に対して「私たちにはそこまでする予算がありません」と語っている。数年前のトルコでの競技会で、ウガンダの選手たちはうだるような暑さの中、エアコンのない部屋に泊まらなければならなかった。一方、裕福な国の選手たちは自前のエアコンを持ち込んでいたという。(今回も日本を含む一部の国は、自前のエアコン導入を発表している)

この問題が消えてなくなることはない

 気温の上昇にともなって、競技の形式やルールを変える必要があるかもしれない。2014年ブラジルで開催されたサッカーのワールドカップでは、試合開始後45分のハーフタイムを待つことなく、30分後に水分補給のための休憩を設けた。2022年ニューヨーク市トライアスロンでも、激しい暑さへの懸念から自転車と長距離走の距離が半分に短縮された。

 世界の気温は上昇傾向にある。特に夏のスポーツに関しては、開催時期を秋まで遅らせるか、南半球での開催を検討するなど、思い切った変更が必要なのではないか。「最終的には良い解決策が出されることを期待しています。この問題が消えてなくなることはありませんから」と専門家は言う。