F&Aレポート

6月「環境月間」2 肉を使わないオリンピック?食肉が環境に与える影響

 パリ五輪といえば、環境に配慮した取り組みで注目されています。市街を流れるセーヌ川を利用した水上パレード、エアコンを使わない超低炭素コンクリート製の選手村や、ペットボトルの持ち込みを不可とするなど、それらはメディアを賑わせています。

 中でも、「美食の国」フランス・パリでありながら、大会期間中、選手や観客、ボランティアに提供される食事に肉類を使わないという取り組みは、世界を驚かせたようです。その取り組みと、食肉と環境の関係をまとめてみました。

肉類を使わない料理

 パリオリンピック、パラリンピックでは、大会を通して排出される温室効果ガスの量を過去の大会と比較して、半減させることを目標に掲げています。

 大会期間中、選手や観客、ボランティアなどに提供される食事、およそ1300万食分は、(1)食材に野菜や豆、穀物などを増やすこと(2)食品ロスを減らすこと(3)使い捨てプラスチックを減らすこと(4)地元の食材を使って輸送に伴う排出を減らすこと。などの対策で、1食あたりに排出される温室効果ガスを、これまでと比べて半減させようとしています。

 具体的には、牛などの家畜は、餌の生産や飼育の過程で、大量の温室効果ガスを排出することから、観客やボランティア向けの料理は全体の量の半分ほどを、肉類を使わないベジタリアン向けのものにするほか、選手村でも選手に対して肉類を使わない料理の提供を増やすことにしています。

肉の大量消費と10の環境問題

地球温暖化〜家畜からの排出量=運輸部門全体の排出量

 家畜から排出される温室効果ガスは、世界の温室効果ガスの約14%を占め、すべての乗り物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵。温室効果ガスの1/3は「食」に関係しているという論文も発表されています。科学雑誌サイエンスに掲載された研究論文では、食糧システムからの温室効果ガス排出について何も対策を取らず放置しておけば、それだけで2050年までに気温上昇1.5℃を超えると発表しています。

水質汚染〜食料のために飼育されている動物は、人口の何倍もの排泄物を生み出す

 米国環境保護庁(EPA)によると、米国の工場畜産場の動物は、毎年約5億トンの糞尿を排泄しています。動物の下水処理プラントがないため、ほとんどの場合、「ラグーン」と呼ばれるため池に保管されるか、畑に噴霧されます。また、工業型畜産では、動物を屋内過密飼育するため大量の抗生物質やホルモン剤などを投与しており、薬で汚染された動物の大量の糞尿が水路から川や海を汚染していることも問題です。そして、家畜の飼料のために栽培された作物も、大量の化学肥料、除草剤、農薬などを使って生産されたものが多く、その多くは小川や川に流れ込み、水質を汚染しています。

森林伐採〜1980年から2000年にかけて約1億ヘクタールの熱帯雨林が失われる

 失われた熱帯雨林の多くが牛の放牧や家畜の飼料などのためのプランテーションによるものでした。森林は炭素を吸収し、蓄える役割があり、気候変動を止めるために、これ以上の森林破壊は非常に危険です。

陸地の1/4を利用

 国連報告書「畜産の長い影」によれば地球上で、最も土地を使用しているのは工業型家畜であり、森林破壊の主要な原因です。

 肉の生産は地球の陸地の26%(1/4)を利用しています。2050年に98億人の食料を確保するには、2010年比で56%多くの食料を生産しなくてはなりません。その他、次のような影響が挙げられています。(5)穀物の大量使用(6)大気汚染(7)土壌汚染(8)水の過剰使用(9)人獣共通感染症(10)生物多様性の喪失など、あらためてご紹介します。(参考 グリーンピース・ジャパン)

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