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江戸しぐさに学ぶ2 江戸美人の条件

特集 江戸しぐさに学ぶ2 江戸美人の条件

 江戸商人の智恵と工夫を重ねて磨かれた「江戸しぐさ」は、商売繁盛のためのルールやマナーというだけでなく、人付き合いのベースでもありました。それは、現代のコミュニケーション能力向上のノウハウといってもいいでしょう。前回につづき、江戸しぐさの考え方について特集します。(参考図書「江戸しぐさ」入門 三五館

1.小股の切れ上がったとは?
 江戸時代、俗に美人を表現する言葉で「小股の切れ上がった」ということばがありました。これは、足袋のこはぜ(足首のところの留め金の部分)が一個でも多いほうが、足首が引き締まったいい女ということのようです。
 では顔はどうだったのでしょう?江戸三大美人の一人と言われた「笹森おせん」は、絶世の美人の上に「客あしらい」が上手かったと言われます。「客あしらい」が上手いとは、お客様への受け答えが上手かったということです。
 たとえば、野暮なお客様がいたとします。今で言うセクハラめいたことをするお客様です。その際に「なにやってんのよ!」と開き直るのは二流で、「そのお国なまりは、○○のご出身ですね。同じご出身の家老様もよくお立ち寄りになりますよ」と、やんわりでも効き目のあるNoを突き返します。江戸の美人とはしなやかな強さを持つ女性だったようです。

2.努力で身に付いたしぐさ、表情、身のこなしに価値がある
 また、笹森おせんは、低音の魅力を持つ女性だったそうです。参勤交代の武士を店に引き入れようと、上ずった黄色い声(不自然な高い声)を上げる女性たちの中で、おせんは舞い上がらず、落ち着いたアルト声で応対したと言われています。地声が低かったわけではありません。
 生まれつきの見目形ではなく、自分の努力で身に付いたしぐさ、表情、ものの言い方、身のこなしといったソフトを評価する教養の高さが、江戸っ子たちにはあったのです。

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