F&Aレポート

話し方スクールの現場から 「社長○○様」「○○社長」「○○社長様」は、どうちがう?

1.取引先やお客様を交えた社内懇親会。社員だけでなく、日頃お世話になっている感謝を込めてお客様を招待し宴会が催されました。司会を務める総務のAさんが「開会に先立ちまして、弊社 ○○社長よりご挨拶を頂戴します」と、アナウンスしました。この表現は正しいでしょうか。
2.1の社長挨拶に続いて、来賓挨拶を取引先のS社長にお願いしました。S社長の挨拶を終えて「ご静聴ありがとうございました」と、司会者はアナウンス。この表現は正しいでしょうか。

アクエリアス話し方スクール

 今回は、MC(マスター・オブ・セレモニアスの略)でよく見られる表現でありながら、実は敬語の基本でもある言葉遣いについて確認してみたいと思います。(アクエリアス話し方スクール)

「開会に先立ちまして、弊社 ○○社長よりご挨拶を頂戴します」:×

 この状況なら、正しい表現は次の通り。「開会に先立ちまして、弊社 社長○○よりご挨拶を申し上げます」

<注意点その1>

 この場にはお客様もいらっしゃるので、「ウチとソト」の関係で、社長は身内扱いになります。従って、社長に敬称や尊敬語は使用しません。

 社内の人だけの集まりなら、「○○社長よりご挨拶を頂戴します」で問題ありません。

<注意点その2>

「○○社長」ではなく「社長○○」とする。社長の『長』は敬称です。「○○社長」は「○○様」と同様の、敬意を持つ意味になります。「社長○○」とすれば、「社長」は役職としての表現になります。

<注意点その3>

 「頂戴します」は、出席者(お客様)を下げて、社長を立てる(上げる)表現になります。ここでは、お客様を立てる表現にしたいので、謙譲語の「申し上げる」を使用し、「社長○○が申し上げます」とします。

「ご静聴ありがとうございました」:×

ここは来賓挨拶をされたS社長に「ありがとうございました」の意を表すべきところ。

(S社長)「誠にありがとうございました」「誠にありがとうございます」などが正しい表現です。

 「ご静聴ありがとうございました」は、聴いている人たちに対してのお礼の言葉になります。

本来「ご静聴ありがとうございました」は、社長挨拶を終えたところで、司会役のAさんが使いたい表現です。例)「社長○○より、挨拶を申し上げます」→ 「ご静聴ありがとうございました」(聴いてくれてありがとうの意。出席者を立てる表現)

「○○社長様」

 慣用的によく使用される表現ですが、1で説明した通り、名前に続けて「社長」を付けると「○○様」と同様の意味を持ちます。課長、部長、社長などの『長』は敬称です。

 そのため、「○○社長様」とすると、二重敬語になるので本来は間違いということになります。どうしても様を付けたい場合は、「社長○○様」とするのが、正しいのですが、会話の上で「○○部長」「○○社長」と言うと、呼び捨てにしている感じがあると、思う人たちもいるようで、あえて「部長様」「社長様」とする旨もあるようです。

 本来は間違いでも、慣用的には許されている部分もなくはない。というグレーな側面もあります。それを理解した上で、どの表現をセレクトするか、その選択権は、組織やご自身に委ねられていると言っていいでしょう。