F&Aレポート

人間関係向上、商売繁盛に効く(かもしれない)心理学

人間関係向上、商売繁盛に効く(かもしれない)心理学

1.初頭効果と終末効果(親近効果)
 平易にいえば「初頭効果」とは、第一印象がその後の評価や判断に影響を与えるという現象。それに対し「終末効果(親近効果)」とは最後に入ってきた情報が最終的なイメージを決定するというもの。たとえば、2時間のセミナーをした後に、「最も印象に残ったことは?」と尋ねると、ラスト30分の内容だったりすることはしばしばある。
 また、「あの人カッコ悪いけど、優しいよね」と、「あの人優しいけど、カッコ悪いよね」では、同じことを言っているにも関わらず、前者では「優しい」、後者では「カッコ悪い」が印象に残ってしまう。
 この二つの心理学を活用するなら、「初頭効果」で印象を上げ、「終末効果」で余韻を残すのが理想ということになる。エレベーターで来客を見送る際に「では失礼します」といったお決まりの言葉ではなく、「次回お会いしたら、野球の続きのお話をしましょう」など、未来を感じさせる言葉をかけると余韻はぐっと深まる。
 接遇では「お迎え3歩、お見送り7歩」という。「出迎えるよりも、見送りを大切にしなさい」という意味である。京都の観光地で人力車を引くある青年は、お客様を案内し勘定を済ませたあとに、お客様が見えなくなるまで見送ることで、大変な話題となり彼の人力車には待ち行列ができるほどの人気があるという。普通は、勘定を済ませたら、見送りもそこそこに「次のお客様」の対応になりがちである。企業では「販売した後に、どれだけの働きかけがあるか」ということになるのであろう。
 初頭効果と終末効果を上げるために何ができるか考えてみたい。

2.フット・イン・ザ・ドア
 「フット・イン・ザ・ドア」とは説得技法のひとつで、要求を受け入れてもらうために、OKしやすい要求から始めて、徐々に難しい要求をしていく技法。たとえば、街中でティッシュを受け取り、「あちらで簡単なアンケートをお願いします」と言われて断れなくなり、その後、高額商品を買わされるというようなパターン。
 最初の承諾が、人間の心や立場を拘束してしまう心理を応用したもので、「フット・イン・ザ・ドア」の言葉は、セールスマンがドアに片足を入れて閉まらないようにしてしまえば売ったも同然だということからきている。

3.ドア・イン・ザ・フェイス
 「フット・イン・ザ・ドア」とは反対の説得技法。最初に希望よりも高い要求をして、後で簡単な要求を行うというもの。たとえば「これを10万円で買ってください」と言われて断り、その後「じゃあ、2万円でいいです」と言われて、なんとなく断りづらくなり承諾してしまうというようなパターン。
 これは、断った側に「断ってしまった」という罪悪感を植え付け、「10万円から2万円に譲歩してくれたから、自分も譲歩しないといけない」と思わせてしまう働きである。

4.好意の返報性と嫌悪の返報性
 先日、あるアンケート結果で「告白されてから、相手のことを好きになる」という回答が7割を超えるというデータがあった。これはまさしく「好意の返報性」である。人は、「好きな人からは好かれたい」という思いがあるが、さらに「自分のことを評価し、好意的に見てくれる人には好意を持つ」といわれている。
 自分のことを評価してくれる上司や先輩を好ましく思ったり、自分に親切にしてくれる人を「いい人だな~」と感じた経験は誰にでもあるはず。
 これに対し、反対の「嫌悪の返報性」というものもある。自分のことを嫌っている人や、悪い評価を下す相手に対しては嫌悪感を抱いてしまうというもの。人から好かれたいと思うなら、まずは自分が相手のことを好きになるのが効果的ということであろう。