F&Aレポート

日本語が消滅の危機 1 国際化には日本語よりも英語の学習が大事?

世界にある言語の数は、6,000〜7,000種類といわれています。(アメリカSLIインターナショナル刊行『エスノローグ 世界の言語』)実際には言語の数を厳密にカウントするのは、「方言」を一言語とみなすのか、それとも単なる方言とみなすのかなど、非常に難しいのですが。

『エスノローグ』の日本の項をみると「日本語族」として、「奄美語」「八重山語」「中央沖縄語」など12種類の言語があります。私たちはこれらの方言を、日本語と違った言語とは考えていません。同様にニューギニア島内陸地、アマゾン地域、アフリカなどの地域にもまだ数えられていない言語が存在する可能性があります。そのため、少数の話者しかいない言語はカウントされないだけでなく、日夜消滅しているのが現状です。言語には、その国や地域が持つ文化や感性、価値観、歴史がつまっています。いわば、アイデンティティといえます。日本語の消滅は日本人らしさや、日本人の心が失われることにも等しいのです。「日本語が消滅するワケない」「国際化には日本語よりも英語でしょ」という人、本当にそうなのでしょうか?(「日本語が消滅する」山口仲美著 幻冬舎新書

日本語話者数の世界ランキングは第9位

 日本語は母語話者数でみると、世界で第9位です。1位は中国語で母語話者数はおよそ8億8500万人、2位英語 4億人、3位スペイン語3億3200万人、4位ヒンディー語2億3600万人、5位アラビア語2億人、6位ポルトガル語1億7500万人、7位ロシア語1億7000万人、8位ベンガル語1億6000万人、9位日本語1億2500万人、10位ドイツ語1億人です。こうして20位までの母語話者数を合計すると、世界人口の半数近い34億9200万人になります。世界第9位の母語話者数である日本語が滅びることはないんじゃないかと安心する人もいると思いますが…。

第二外国語として学ばれることのない日本語

 言語消滅の原因は、母語話者数のみにあるわけではありません。英語やスペイン語などは、発祥の地であるイギリスやスペイン以外の土地でも話されています。さらに第二外国語として世界中で学ばれています。

 ところが、日本語は日本以外の国で話されることはありません。第二外国語として学ばれることも多くはありません。日本語は日本でしか話されていない孤立言語です。

 ちなみに、第二言語として学んでいる話者数を加えて世界の言語使用状況を捉えると、英語が第1位で合計13億5000万人。日本語は13位に下がります。しかも、日本語の母語話者である日本人の人口は、現在減り続けています。(100年後の日本人口は5,000万人以下という統計もあります)さらに日本は終始災害に見舞われています。日本列島が壊滅的な被害を受けて、日本人が極端に少なくなったら?その上、心配なのは、英語さえできればいいと思っている人が増えていることです。

日本で消滅危機にある言語は「8つ」〜方言から消滅していく

 ユネスコの調査では、日本で消滅危機にある言語は「8つ」と指摘され、アイヌ語、奄美語、八丈語、国頭語、宮古語、沖縄語、八重山語、与那国語が記されています。

 日本全国の方言は、50年ほど前から消滅の危機が叫ばれていました。1999年には

「基本的な部分は共通語で固められた上に、感情表現に関わる言葉に方言的要素を散りばめるといった程度が、今や方言的な会話の実態」と言われています。

 方言は、国家という概念ができると、消滅する傾向があります。ゆっくりと国家の標準的な言語体系に向かって方言が変化し、消滅してしまうからです。

 方言の消滅に続くのは、より高いレベルの国家語、つまり「日本語」です。消滅の波は「方言」から国家レベルの「日本語」にまで、ひたひたと音もなく押し寄せてきています。

言語消滅の原因は何か〜日本語は過去に消滅の記憶を持たないのか?

言語が消滅する原因をまとめると、次の通りです。

  1. 自然災害や大量虐殺、疫病や強制労働などによって話者が全滅してしまった時
  2. 同化政策が実施された時
  3. 自発的に他言語にのりかえた時
  4. 征服者が被征服者の言語に同化した時
  5. 別の言語を派生させ、役割を終えた時 *これら複数が重なるとき (次号につづく)