F&Aレポート

帝王学とノブレス・オブリージュのちがい 2

<前回のレポートから>

 一般的には、将来天皇になる方に行う教育を「帝王学」といい、未来の天皇陛下の弟君や欧米の貴族など、高位の方に行う教育を、フランス語で「ノブレス・オブリージュ」といいます。また、名家の子女に行われるノブレス・オブリージュを日本語では「淑女教育」や「貴婦人教育」と称することが多いようです。一方、「帝王学」という言葉は、企業の経営者などが自分の後継者を育てるときの教育としても使われています。(皇室に学ぶプリンセスマナー 上月マリア著

1、人に尊敬される人柄とは

「人として望ましい人格」とは、「多くの人に尊敬される人柄」といいかえることもできます。どのような心を持つ人が本物の紳士・淑女なのかを、「人に尊敬される人」という視点から見つめてみましょう。

 たとえば、自分よりも立場の高い人や高名な人の前では媚びへつらい、立場の低い人に対しては威張った態度をとる人。その人を心から尊敬できますか?

 およらく、答えは「ノー」ではないでしょうか。その答えは正解です。

 国際社会の中で紳士・淑女と称される人とは、どんな時も、誰に対しても態度を変えなることのない、本物の品性を持つ人のことです。

2、自分への誇り~自分という「木」の根

 どんな時も、誰に対して態度を変えない人。人への思いやりという真のエレガンスが身についている人は、同時に、自分への誇りをお持ちです。その誇りとは決して尊大なものではありません。 「本当の自分」への深い造詣から生まれる、一人の人間としての、温かな誇りです。

 そのためには〝小手先の自分探し〟など通用しません。まさに〝小手先の自分探しと自分磨き〟の王道とでも申しましょうか。まず、自分の中に流れる命のつながりを素直に見つめることからそれは始まります。そして宇宙の一部としての自分、自然界の生き物・ヒトとしての自分、日本人としての自分、といった「自分らしさの土台」についてしっかりと学び、自分という木の強い「根」を張るのです。

 その上に、社会の一員としての自分、国際人としての自分、そして立場上必要な事柄などを学び、丈夫な「幹」を育てていきます。

3、命の本質の理解が、知・仁・勇をそなえた人望あるリーダーを育む

 こうして自分自身を深く広い見地から学ぶことによって、すべての命に差などなく、皆等しく尊いこと、人は向上心を持ち幸せになりたいと願っていること。そして、人の幸せを願い、互いに助け合う力(無償の愛情、母性)を皆が天与されていることなどの、生命の本質を深く理解することができます。

さらには、これにともなって、どのような状況にあっても動揺しない精神力や、物事の本質を見抜く目、澄んだ心ゆえに働く洞察力、あらゆる物事への感謝の心が自ずと育まれ、知・仁・勇をそなえた人望あるリーダー、自分への誇りと他者への敬いの心を併せ持つ、愛し愛される人柄になっていきます。そしてこれこそが、真の自分らしさを追求する意義であり、古今東西変わることのない、帝王学、ノブレス・オブリージュ、貴婦人教育の精神であり、真髄なのです。

4、厳しい躾があるからこそ強い根を張った子どもが育つ

 「厳しいしつけ」とは、「高い志と愛情のもとに行われる、筋の通ったしつけ」のことです。また、「しつけとは抑え込むことではなく、伸ばしてやること。子どもが将来上手に生活ができるよう準備してあげること」です。しつけは「躾」と書き、前提は、親が自分自身の心や振る舞いを磨く姿を子どもに見せることにあります。

 心と体は一体なので、話し方や振る舞いを磨くことからも心は磨かれ豊かになります。ノブレス・オブリージュでも日本の禅や華道・茶道でも振る舞いは「一回一動作」が基本。

一つの動作に専念することは、心を鎮め穏やかな精神を養うことであり、自分の行動に責任を持つことであり、トラブルを未然に防ぐことなど、さまざまな意味があります。またその姿はエレガントで堂々と落ち着いていて、見る人に信頼感を与えます。まさに人として上位者として必要なたしなみといえるでしょう。

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