オリンピックがもたらすもの ３～レガシー「小さくても勝てる」
賛否両論ありながら、期待と不安が入り混じる中で開会した東京2020オリンピックは昨日閉会しましたが、世界が注目する大舞台は、多くのドラマとレガシーを作りました。
今回は、「小さくても勝つ」をテーマに２つのレガシーをご紹介します。
１、女子バスケットボール初の銀メダル トム・ホーバス監督
・「みんな自分の力を信じていない。どうやったらその力を引き出せるか」
・「うちのチームにスーパースターはいない。でも『スーパーチーム』だ！」
・ 「世界で二番目に平均身長が低い日本チームが勝つためには、スピードと戦略しかない」
「トムがやりたいバスケットは世界を驚かせることができる。選手として、それをコートで表現するのは楽しい」という主将の高田真希氏。この「トム」こそが、日本女子バスケットボールの名将 トム・ホーバス監督（54）。
もとNBA選手のホーバス氏は、トヨタ自動車で実業団として活躍。その後、米国に戻りIT関連企業に就職し一時は副社長まで務めるが、日本バスケット界の指導者として再び来日する。
ホーバス氏は代表監督に就任した2017年以降、「自分の言葉で伝える方が、インパクトがある。表現の幅を増やしたい」といい、選手への指導や報道陣への受け答えも日本語で対応する。妻は日本人。スマホに日本語学習アプリを入れ、教本を積んで勉強した。それでもここまで日本語で対応する外国人指揮官は珍しい。代表合宿中、練習後に選手と1対1で話す時間も増やした。
一方で、練習の厳しさは崩さない。バスケットは身長がものを言うスポーツだ。「身長の低い日本が勝つにはスピード。40分間ずっと走り続けなければいけない」また、「みんなが自分の力を信じていない。どうやったらその力を引き出せるか」を考え、徹底した組織力を磨くため、攻撃のフォーメーションだけでも数十通りにのぼる。プレーの約束事を書いた紙を体育館の壁に貼り付け、受験勉強のようだった時期もあるほど、練習の厳しさも世界一と言われる。東京オリンピック初戦は世界ランキング5位と格上のフランスを74―70で破り、第2戦は五輪6連覇中の米国と対戦。86―69で敗れたものの、相手監督に「日本はメダルを取れるチームだ」と言わしめた。（https://www.asahi.com/articles/ASP7Y3K0BP7XUTQP02K.html）
２、従業員22人の会社がつくるメダルケース
・「地方の小さなメーカーでもビッグプロジェクトに携われる。そういう時代になった。どこにでもチャンスは眠っているということを発信したい」
・東京2020オリンピックのメダルケース：落ち着いた藍色の中に浮かぶ鮮やかな道産タモ材の木目。細かい仕上げは職人の手作業。磁力で付いているふたは、手でずらすと箱の端でぴたりと止まり、開けたまま飾れるようになる。日の丸を想起する美しい円形の中に、繊細かつ正確な動きが秘められている。
「MADE IN TSUBETSU」を世界に届ける。東京オリンピック・パラリンピックのメダルケースは、津別町の家具メーカー「山上木工」が製作している。同社3代目の山上裕一朗専務（36）と千葉のデザイナー吉田真也氏（36）がタッグを組んで受注を勝ち取り、約5000個を創作。
資本金300万円、従業員22人。人口約4500人の町の小さな会社が、世界的スポーツの祭典で、精巧な技術とアイデア、そしてチャレンジ精神を発信した。東京五輪で表彰台に立つトップアスリートが、津別の高い木工技術に触れることになる。山上専務は「地方の小さなメーカーでもビッグプロジェクトに携われる。そういう時代になった。どこにでもチャンスは眠っているということを発信できたら」と話した。
18年9月、知人からメダルケース作品募集の話を聞き、即座に動いた。入札期限まで1週間を切っていたが、同社のデザインを手がけていたプロダクトデザイナー吉田氏に連絡。「思いが重なった。寝ないでやれました」。ふたと箱をつける8個の磁石の配置角度を0・5度ずつ変え、約200個の試作品を経て、磁力で正確にふたを脱着、かつ固定できる位置を突き詰めた。渾身の作品は19年春に見事、受注を勝ち取った。
コロナ禍で大会が1年延期。納期が当初より2カ月延びた分、気温や湿度で変化する木工製品特有の長期保管対策に、より時間を費やすなど万全を期した。「五輪は東京だけでやるものじゃない。全国で盛り上げていかないと。世界の人が日本に注目している。その1つを担えることに幸せを感じる」。ものづくりにかける小さな街の心意気が、大きなイベントを支えた。（https://www.nikkansports.com/olympic/tokyo2020/news/202007210000212.html）
