F&Aレポート

洋食マナー 「イギリス式」と「フランス式」の混同

洋食マナー 「イギリス式」と「フランス式」の混同

 たとえば、食事後にナイフとフォークのお皿の右側に揃えることや、スープをいただく時に手前から奥に向かってスプーンを滑らせるなどは、一般的に多くの人に知られているマナーですが、厳密にいうと前者はフランス式、後者はイギリス式の作法です。

 お皿に残ったソースをパンにつけて食べる行為はフランス式で、イギリスではNGです。フォークの扱いも違います。たとえばライスをいただく時に、フォークを右手に持ち替えてフォークの腹側に乗せていただくのはフランス式。イギリスではフォークは持ち替えません。フォークの背中側に乗せていただきます。日本では「フォークの背中側にライスを乗せて食べるのは間違い」という人もいますが、これは間違いではありません。イギリス式のマナーなのです。

 このように日本の洋食マナーはかなり混同していますが、日本では江戸から明治に移る頃、西洋の文化を取り入れようとして皇室や上流階級の人たちは、政治的な観点もありイギリス王室に学びました。そのため、日本での最初のテーブルマナーはイギリス式が採用されていました。

 しかしその後、多くの人が旅行や留学などで西欧を訪れるようになり、日本でもフランス料理が広まりました。フランス料理は当然、フランス式のマナーを重んじます。そこで、伝統的なイギリス式マナーと、フランス式マナーが混同されるようになるのです。

 現在でも皇室行事にはイギリス式が採用されていますが、私たちは英・仏の違いを知った上で、状況に合わせて周囲の人と楽しく食事ができるのがベストです。なお、イギリス、フランスに関わらず、ナイフの刃を他の人の方に向けるのは一番やってはいけないこととされています。